栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい



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樟虫 入醋死引腹中筋長丈余閩人用縁蒲葵楓蚕之糸
 亦勒可作大釣緍凡樹虫如蚕者皆有糸或繭成蛾熏紙甲皆
 厚 右清皖桐方氏浮山此蔵軒物理小識
 樟虫如指大長数寸緑糸色用醋洗之去肉其中有糸抽出長ニ
 尺許名曰虫糸、用以繫釣 漳州府志
廣西横州有曰楓蚕楓葉始生有虫食葉如蚕亦赤黒色四月熟
 時吐糸土人劈取糸光明如琴糸海浜蜑人買作釣緍
 右明田芸蘅留青日札
 昌□(にすい+蔵)開丹羽召伯庶物類纂云謹按享保乙卯之春令璚浦之譯
 士官梅某訪楓蚕糸于清人應曰是天蚕糸。一名虫糸出廣東之
 海南福建亦有之此虫三四月間生於楓樹上至六七月而虫長大ニ
 三寸至腹肥大刳腹取糸其状如腸漬醋牽之為線風乾為
 釣糸之用又纏棕傘帽子之縁 本邦之俗以徳愚思テグス
 之蜑人専用作釣緍
 昌□(にすい+蔵)再按此虫栗及楓樹上ニ生ス指大ニシテ全ク尋常ノイモムシニ異ナル事ナシ

 微毛アリ左図ノ如シ其巣ヲ結フヤ褐色ナリ其綱ヲナス糸甚強シ
 綱目ヲナシテ中ノ蛹透テ見エ小児採テ蛍火ヲ盛ル故ニ俗間蛍袋ト
 云此虫ヲ多ク羪テ其繭作ントスル前腹大ニ透明ノ時ヲ伺テ
 刳取タラハ 本邦ニテモ得ル事易カルベシ去歳或人懐中ヨリ自
 製ノ的具私テグス一條ヲ出シ予ニ示ス透明浄白上品ノ物ナリ其人ニ問ハ
 自家の羪蚕ノ欲作繭ノマエ咽通明琥珀色ヲナス時ニ取タリト語ス
 嘗テ聞信州飯田ニテ檪樹上ニ生スル虫ヲトリテグスヲ作ルコレヲ
 ナラ虫ト云近年阿州ニテ殖養シテテグスヲ作ル虫ヲトチカンジヤ
 ウト云紀州ニテモコレヲ学デテグスヲ作ルモノヲ一看スルニ舶来ノ物ニ
 異ナル事ナシ虫作レルマユヲミルニ下図ノスキダワラナリ丹洲案スルニ
 会津ニテ檪樹ニ養テ繭ヲ作ラシムル虫ヲシラガタユウト云糸ヲツム
 ギテ布ヲ織ル上品ノモノハラセイタノ如ク下品ノ物ハモンパノ如シケ
 ムシオリト呼テ国産トス此虫ノ作ル繭ニテ製スルモノナリ此虫ニテ作
 レルテグス靭柔ニテ舶来ニ同シ四国紀州蜑人専ラ釣緍ノ用ニ
 備テ専ラ利益アリト云コレヲ作ル虫別所ニ□(口の下に靣)ヲ出スミルベシ唐山
 樟虫楓蚕ノ名アリ何レノ木葉ニテモ喰フニヤ栗檪ニ際ルヘカラズ
 

書き下し

現代語訳

樟虫 酢に入れ死んだら、腹の中の筋を長く一丈余*1引く。漁民は蒲葵*2を縁取るのに*3の糸を用いる。
 また大きな釣り糸をだいたい、蚕のような樹につく虫で、糸を吐くもの、或いは繭を作る蛾で、勒*4作るべき。熏紙甲皆
 厚*5 右清皖桐方氏浮山此蔵軒物理小識*6
 樟虫は指のように大きく、長さは数寸あり、緑色だ。これを酢で洗い、肉を取り去り中にある長さニ
 尺ほど*7糸を取り出す。これを虫糸といい、釣糸としてつなぐ。 漳州府志*8
広西横州*9楓蚕は楓葉始生有*10蚕のように葉を食べるという。また赤黒色になり四月熟す
 時吐く糸を現地人が裂いて取る糸の輝きは、琴の糸のようで*11海浜の漁民は釣り糸にする為買う。
 右明*12田芸蘅*13留青日札*14
 昌□(にすい+蔵)開丹羽召伯*15庶物類纂*16云謹按享保乙卯*17之春令璚浦*18之訳
 士官の梅なにがしが楓蚕糸を持って訪れた。清人は「これは天蚕糸」と応えた。虫糸ともいう。出広東
 海南福建*19にもまた同じ物がある。この虫三四月の間楓樹上に棲息する。六七月に至ると、虫も長く大きくなりニ
 三寸*20腹も肥大する。腹をくりぬき、その腸のような糸を取り、酢につけて引っ張ると線になり、風で乾かすと、
 釣り糸やシュロの傘帽子の縁をまとめるのにも用いる。 本国ではこれを俗に徳愚思テグス称し
 漁民はもっぱら釣り糸を作る。
 昌□(にすい+蔵)再び考えるに、この虫はクリ及カエデの木にも生息する。指程の大きさで、まったく普通のイモムシと違う所は無い。

 左の図のような、かすかな毛がある。その繭は褐色である。綱状の糸は大変強い。
 糸は編み目になっていて中の蛹が透けて見える。子供は採って、ホタルを入れる。故に俗にホタル袋と
 という。この虫を多く養って、その繭を作ろうとする前に、腹が大きくなって透き通るのを待ち
 くりとったら、本国でも手に入れるのは簡単である。去年ある人が懐の中から自
 作の的具私テグス一条出して私に見せてくれた。透明で白く上等な物だった。その人に聞くところによると
 自家養蚕をし、繭を作ろうとする前に、体が透き通って琥珀色になる時に採ったと語った。
 かつて信州飯田*21ニテクヌギの樹上に棲息する虫をとり、テグスを作ると聞いた。これを
 ナラ虫という。近年阿州*22で養殖してテグスを作る虫をトチカンジヤ
 ウと云。紀州*23でもこれを学んでテグスを作る物を一見したが、舶来の物と
 異なる事は無い。虫の作った繭を見るに下図のスキダワラである。丹洲思うに
 会津ではクヌギの木で養って繭を作らせる虫をシラガタユウといい、糸をつむい
 で布を織る。*24上等のものはラセイタ*25のようで、粗末な物はモンパ*26の様である。ケ
 ムシ織とよんで産物とする。この虫の作る繭で製する物である。この虫で作
 るテグスしなやかで強く舶来の物と同じ。四国紀州漁民はだいたい釣り糸にする為
 そなえて、利益があるという。これを作る虫を、別所ニ図を出すので、みるべき。中国の
 樟虫、楓蚕、の名があり、どのこの葉も食うのだろうか、栗檪に際る*27わけではない。

備考

他にも広西横州のイモムシは赤黒く成長するというから、クスサンではなく他の野蚕だろう。
いずれにしても、絹糸線*28の発達する。イモムシであるなら
テグスが取れるということをのべている。
ただし、次頁の図、スキダワラはクスサンのことである。
多食性ではあるが、広葉樹林以外では見かける事はあまり無いので
何かしら好みはある模様。

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