栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい



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独脚蜂
紀州名草郡檜隈車中ノ一大樹ノ根皮ニ此蜂粘着ス其形赤
蜂ニ似テ狭長ナリ翼ヲタヽミテ枯死ス一望スルニ木ヲ以テ形ヲ作リタ
ルカ如シ其翼ノ紋脉クボミテ刻鏤セルモノニ似タリ尾尖ニ針二分許
出ツ全体ノミニ〆脚ナシ唯此木皮共□■■スルニ腹ノ正中ヨリ一脚
ヲ出シ直チニ樹皮ヲ貫通ス此木皮共厚キ事事ニ三分木心ニモ通リタルトミ
ヘテ皮ノ裡ヨリ見レハ二分ノ餘モ脚ノ尖リ出テアリ形棕毛ヨリフ
トク強ク赭黒色ニ〆光澤アリ恰モ針ヲ以テ木皮上ヨリ釘スル
ガ如シ此蜂コレカ為ニ動揺スル事アタハズ〆遂ニ枯死スルニ至ル此
蜂如何ナル神罰天譴アリテカ如此ノ厳刑ヲ受ルモノヽ如シ紀藩
儒生崖南嶠俗名淳
蔵ナルモノ去々年
此地ニ遊テ此蜂ヲ
樹ヲ連テ採皈テ珍蔵ス去■東都ヘ
出府〆岡田氏へ示ス同氏又余ニ示ス其樹皮ニ粘着スルモノ十餘
人ニ手觸〆其脚ヲ折損ス全者只一箇ヲ得テ小匣ニ入珍蔵セルヲ親
タシク観テ奇異ノ思ヲナス先年ヨリ仄かニ
聞及タレ共何レニアルモ
ノナルヤ不知モノナリ蘭
山見ザルヨシ啓蒙ニモ云ヘリ
経年其遺却セン事ヲ恐ル因テ略其形ヲ図〆同好ノ君子ニ示ス
草窓曽遵山、嘗有観独脚蜂之文云、文化乙亥仲冬、紀伊公儒
官岸南嶠、携独脚蜂来、令余判為、余乃看之、虫之状似穉蜂、而其
身与翅□長、固着于木皮、見皮之裏面、儼貫純黒一鍼、則知陳蔵器
所注独脚蜂而巳、此蜂人未能詳識也、南嶠儒而復能審於品物、
独脚之蜂亦能隠乎深林今在南嶠其顕為、南嶠之篤於名物、可
謂逾毛鄭諸儒矣、占春竟乃䟽之如斯、

書き下し

現代語訳

独脚蜂
紀州*1名草郡檜隈社の中の一本の大樹の根の皮に、このハチは張り付いていた。その形は
赤蜂*2に似て細長い。羽をたたんで、ひからび死んでいる。一見すると、木で形作った
ようである。その羽の紋脈はくぼんで、彫り刻んだものに似ている。尾先に、針が、二分*3くらい
出ている。全体だけで、足はない。ただ、此木の皮□*4■■するのに、腹の真ん中から一脚
出して、すぐ樹皮を貫通する。この木の皮は厚くて、ニ三分*5木の芯にもとおっているように見
えて、皮の裏から見れば、二分*6余も脚が尖って出ている。形はシュロの毛より
太く強く、赤黒くて光沢がある。まるで、針を使って、樹皮から釘を打った
ようである。このハチは、この為に動く事ができず、ついに干からびて死に至る。この
ハチにどのような神罰、天罰で、このような厳しい刑を受ルモ者の様になったのか。紀藩*7
儒学者の崖南嶠俗名淳
*8というものが、去々年
この地に遊びに来て、このハチを
樹の皮ごと連れて採って帰て秘蔵していた。去年、東の都*9
出府して、岡田氏*10へ見せる。同氏はまた、私にも見せる。その樹皮にくっついた物は十何
人に手で触らせ、その足を折ってしまった。全者只一箇所をもって小箱ニ入珍蔵していたのを
真直に見て、奇異な事に想いをはせる。去年から、時折、
ききおよんでいたが、どこにある物
なのか、知らなかった。蘭
*11見てないと、啓蒙*12にも言っている。
長年、それを忘れる事を恐れて、その形を図して同好の君子に示す。
草窓曽遵山*13、かつて独脚蜂の文を見たことがあるという。文化乙亥*14仲冬、紀伊公儒
官岸南嶠*15、独脚蜂を携えて来る。私に判じよという。私はみせてもらった。虫の形は似る穉蜂*16、その
体は□*17長翅あり、木皮に固着する、皮の裏面を見ると、動かせない程、黒い一鍼が貫いていた、すなわち知陳蔵器*18
所注にある独脚蜂である。このハチ人は未だ詳細な知識がない。南嶠儒*19而復能審於品物、
独脚の蜂またよくかくれるのか、深い林の中にある。南嶠其顕為、南嶠之篤於名物、可
謂逾毛鄭諸儒矣、占春竟乃䟽之如斯*20

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