千虫譜ウィキ - 原本A3-57


原本B

生物情報

翻刻

(右頁)
臺湾府志云蛇臺産有数数種一名飯匙蛇債者頭扁飯匙如
見人頭昂ニ三尺惟尾貼地噴鼻有声又有簸身箕甲蛇之最
毒者大者数尺惟身有横文黒相間俗名手甲蛇■*1有毒汗
経行處草木皆萎齧人数十歩立死其骨檮爛擲之悞践
亦能刺人閩地多有 鎮江府志云望极㱕又名䎼聴形如
反鼻居樹上見人影則跳来齧之齧已還樹垂頭聴聞哭声乃去即
是也俗傳齧已即昇木望棺入而㱕得此名本草名千歳蝮埜翁方
名斫木蛇以枡木時作声云博叔者猶可活若云斫木者不可救也今
古屋深山中往々有之不可不知也 昌蔵謹按ルニ琉産反鼻コヽニ図載ス
ルモノ頭大頭張リ頸却テホソシ其毒最酷烈ナリ因テ考ルニ右ニ書ニ所謂
飯匙債及望棺㱕此物ノ種類ナルベシ嘗聞薩州ノ人何■(小島甚兵衛)琉ノ属嶋ニ
至リ夏月涼ニ乗〆樹陰下ニ憩フ傍ニ人アリ樹上ニ飯匙毒蛇アリ速ニ避去
ヘシト其人怖テ身ヲ側テ去ントス蛇卒ニ激堕ス牙ヲナラシ鼻孔
気ヲ噴テ声ヲナス其勢髇頭箭ノ飛響ノ如シ其人ノ身ノ傍寸許
ヲ隔テヽ落下ス幸ニ躰恙ナシト𧈧𪜈半身忽ニ紫斑ヲ蕟シ不仁苦痛
ス頓ニ三楞針ヲ刺シ瀉血〆咬傷解軟膏ヲ塗リ蛇滅門草ヲ煎服〆十日
許ニ〆平■*2スト云
反鼻一種琉球ニ産スル毒蛇アリハブト名ク形

「目中金色ノモノキンハブ
ト云テ甚大毒其毒齧
ヲ被ルモノ即時ニ心ヲ攻*3

(左頁右下)
テ半時許ノ
中ニ斃不知

(左頁上段)
容尋常ノ蝮蛇ニ似テ長五六尺頭方ニ〆扁シャ
クシノ状ノ如シ全身有鱗黄褐色ニ浅黄斑紋アリ腹
下淡白ニ黒横紋アリ其口唇濶大両牙露出ス能喬
木ニ上リ棲ミ樹下ニ人彳憩フ事アレハ欲然ト〆躍下テ
咬ム人此咬傷ヲ被ムルモノ毒猛烈ニ〆必死ニ及フモノ多シ
琉島ノ地方ニ生シ四時倶ニアリテ大害ヲナスモノ也交*4処ニ其
傷所ノ肉ヲ利刀ニテ截去金瘡トナシテ療スレハタマ々九
死ヲ免テ一生ヲ得ルモノアリト云
傳フ近来咬傷解毒ト云
妙剤アリテ傷処ニ傳レハ脂
液ヲ吸出〆早ク愈ト云此
薬ヲ不用ハ遍身忽ニ紫黒腫満苦痛〆其一昼夜ノ中
ニ落命スト云実ニ可懼ノ甚シキモノナリ
此モノ地ニ落テ其マヽ碎泥ノ如ク
其怒気熱勢ニテ沸カ如ク一塊ノ(左下に続く)

(左頁左下)
膏ニ似タルモ
ノトナルト云人ニ敵
スル事如此ナル怖ルベキノ甚キモノナリ舶来
ノ白花蛇モ又頭大額上扁ク両牙利
鋭ナリ飯匙状ヲナスコレ亦此モノヽ
類也

維虺維蛇

書き下し

現代語訳

(右頁)
臺湾府志*5がいうには、台湾の蛇は数種いるその中の飯匙蛇債は頭が平たくしゃもじのようで
人を見ると、頭をあげる。ニ三尺*6ただ、尾は地についている。鼻から声をだし、また箕甲のような体をあおる。蛇の最も
毒のある者である。大者は数尺、身に横紋のしまがある*7俗名、手甲蛇。■*8は有毒の汗
がとおる所、草木はみなしおれ、かまれた人は数十歩で死ぬ。其骨切り口はただれ、擲之*9誤って踏み
よく噛まれる人が閩*10の土地に多い。 鎮江府志*11がいうには、望极㱕またの名を䎼聴*12形は
反鼻*13のようで、木の上にいて、人陰をみれば飛んできて噛みつく。噛むと木にもどり頭を垂れて泣き声きいて去る
のはこれである。俗に伝わるところ、噛んだ後木に上るのは棺桶を望み、棺に入り泣くのでこの名を得る。この本草名は千歳蝮埜翁、方
名は斫木蛇以枡木時作声云博叔者猶可。活若云斫木者不可救也。今
古屋の深山の中で往々これはどうなるかわからない。*14 私がつつしんで、考えるに、琉*15産の反鼻ここに、図を載せる
もの頭は大きく頭はりだして、頸はかえって細い。其毒は最も強烈である。それから考えるに、右のニ書いわゆる
飯匙債および望棺㱕は、この物の種類であろう。かつて聞くには、薩州*16の人何■(小島甚兵衛)琉*17に属する嶋に
行き、夏月の涼さに乗じて樹の陰下で休憩していた所、そばにニ人いた。樹の上に飯匙毒蛇がいた。はやくよける
ように其人はおそれて、身をこわばらせ、さろうとした。蛇はにわかに、激しく落ちてきた。牙をならし、鼻の孔から
気をふいて、声を出す。その勢いは鏑矢の飛ぶ響きのようだった。其の人の身のそば、数僂个り
の所に落ちてきた。幸いに体に害はないといえども、半身がたちまち紫の斑が現れ、苦痛はひどかった。
すぐに、ニ三楞針*18を刺して、血を出して、咬傷に解軟膏を塗り蛇滅門草*19を煎じて服用して十日
許して平癒するという。
反鼻の一種、琉球にいる毒蛇がいる。ハブと名前がつく。形は(左頁右上に続く)

「目の中が金色のものをキンハブ
といって、たいへんな大毒である。その毒でかまれる
とすぐさま心臓を攻め*20

(左頁右下)
て半時*21ぐらいの
うちに倒れて治らない。

(左頁上段)
普通の蝮に似て長さ五六尺*22頭方は平たくシャ
クシの形のようである。全身に鱗があり、黄褐色に浅黄のまだらもようがある。腹
下はうすい白に、黒い横紋がある。その口は広く大きく両牙が露出する。よく高い
木に上り住み、木の下に行き休む事があれば、待っていたとばかりに、飛びおりて
人を咬む。この咬傷を受けたものは、毒が猛烈なので、ほとんど死ぬ事が多い。
琉島の地方にいて、四季を問わずいて大変な害をだす。すぐさまに、その
傷の場所の肉を、鋭い刃物でえぐり取り、刃物による傷として、治療すれば、偶に、九
死をまぬがれ、一生を得るものがあるといい
伝える。近頃は、咬傷解毒という
妙剤があって、傷に伝えれば、脂
液を吸い出して、早く癒えるという。此
薬をもちいらなければ、全身たちまち紫黒く腫れて苦痛のうち、その一昼夜のうち
に命を落とすという。本当に甚だしく恐ろしいものである。
このもの、地に落てそのまま、砕いた泥のように
その怒りの熱で湧くように一塊の(左下に続く)

(左頁左下)
膏に似たもの
となると云。人に敵
する事、このように恐るべきものである。舶来
の白花蛇もまた、額の上平たく、両牙が鋭い。又
飯匙状をしている。これもまた、この物の
類である。

維虺維蛇*23

備考

台湾にはおよそ16種類の毒蛇がおり、
そのうちのいくつかを混同し、誇張された表現が見られる。
飯匙債はタイワンコブラ、樹上によくいるのはタイワンハブ
音を出すのは、コブラと、クサリヘビ
白花蛇はアマガサヘビと思われる。
攻撃性の高さはそれぞれである。