千虫譜ウィキ - 原本A3-64


原本B

生物情報

翻刻

(右頁)
同右顕微鏡ニテミルモノ如図驚
ク時ハ其尾ヲタヽミテ長ク一束ニス
雉子ノ尾ノ如ク伸フ平常ハ尾毛ヲ
四方え開キ掌ヲ拡タルカ如シウド
ノ嫩茎或酴醿ニツク白絮ヲ出
〆聚リツク人ノ影ヲミテハ木ノ
後へマワル尾ノ白毛ヲ常ハ背ニ
負フ時アリテ開ク孔雀ノ如
シ因テ尾州孔雀虫ト云
白毛恰モ蘿摩鼓中ノ
絨ノク光リアリ人捕
レバ鬆脱ニ〆折去ル日ニ映スレハ
毛端青ク又淡紅色ニ〆美ナリ
人捕トスレバ跳リ避ク事高サ尺餘老
スルモノ尾毛生シ背ニ褐色ノ斑アリ尾端ノ毛黄
色ヲ帯フ

(左頁)
文政丙戌春和蘭医シーボルト江戸ニ来ル
示ス一小冊ニ此図アルヲ見ルニコノ虫ニ似タリ木枝ニ多ク着ク尾ニ白キ
毛茸アリ俗ニオコゼト云モノ水蝋樹上ニ生シ巣ヲ造ルモノ即枝纏ヒテ白
脂凝結セルガ如シコレ即白蝋
ナリ俗ニイバタラウト云イボタ
ノ花ト云モノナリ

書き下し

現代語訳

右に同じく顕微鏡で見たものは、図のようなものである。驚
いた時は、その尾をたたんで、長く一束にする。
キジの尾のように伸びる。平常の時は尾の毛を
四方へ開き手のひらを、広げているかのようだ。ウド
の若い茎や、酴醿*1につく。白綿を出
して、集まってつく。人の影をみると、木の
後へまわる。尾の白い毛は常に背に
負う。時あって、開くときはクジャクのようである。
それにちなんで尾州*2孔雀虫という。
白毛はまるで蘿摩*3*4中の
*5ように、つやがあり、人が捕
れば、まばらに抜け、折れる。日にうつせば、
毛の端は青くまた、淡い紅色をして、うつくしい。
人が捕ろうとすると、跳ねてよける。その高さ尺餘*6
いたものは、尾の毛を生やして、背に褐色のまだら模様がある。尾の端の毛も黄
色をおびる。

(左頁)
文政丙戌*7春に和蘭医シーボルト*8江戸に来る。
一冊の小冊子を示して、この図があるのを見るに、この虫に似ていた。木枝に多くついて尾に白い
毛があり、俗に、オコゼという物。水蝋樹*9上に生じて、巣を造つくるものは、枝にまとって白
脂が固まっているようだった。これは、白蝋
である。俗にいうイボタラウという。イボタ
の花と云いうものである。

備考

原本A1-26のイボタロウを作るのは
この虫であると考えたようである。
実際はイボタの木につくのは、イボタロウカイガラムシ
なので、的外れだが一般に、白い綿上のロウ物質を
イボタの花と呼んでいた可能性はある。