千虫譜ウィキ - 原本Ａ1-14

原本Ｂ

原本Ｂ1-21原本Ｂ1-20

生物情報

ニホンミツバチ

翻刻

群蜂コレヲ刺殺ス或ハ風雨堂ヲ侵シ又雑人ノ毎ニ堂ヲ窺フ事ア
リ或ハ糞穢ノ気堂ニ逼リ或ハ堂衛破壊スル事アリ大黄蜂又
ハ蟻蜘等ノ堂中ニ聚マル事アリ新ニ喪を受ケタル人月信婦人等ノ
近キ視ルカ如キ群蜂悉ク去リテ不還若新ニ堂衛ヲ築テ清潔ナル時
ハ即還リ至ル事アリ或ハ事ニ触テ満堂ノ群蜂尽ク死スル事モマゝ
アル事ナリ故ニ堂ヲ設タルノ家慎戒スヘ各々*1勤行ノ役アル事右ノ図
ヲ以テ察スヘキモノナリ唐山ニモ其説アリ左ニ挙ク
陳�綮卮訶漸峩星礁�蜂身短而脚長尾有鋒螫聚蜂内有一
蜂王形独大且不螫人毎日群蜂両朝名曰蜂衛頗有君臣之
義無王即衆蜂皆死若有二王其一必分分出時老蜂王及遜
位而出衆蜂均㨍其半畧無多寡従王出者不復回旧房出
則群蜂擁護其王不令人見当採花時一半守房一半挨次
出採如掠花少者受罰但採各花鬚俱用甕足挟ニ花珠
惟採蘭花則必背負一珠以此項献其王又有蜂将不善往外
採花但能醸蜜至七八月間蜂将蓋死若不死則蜜皆被
蜂将食去衆蜂必饑故俗諺云将蜂活過冬蜂族必皆空亦一異也
凡ソ蜂蜜年ニヨリテ得ル事多寡アリ天気和順ニシテ翌春梅花ノ多
ク開テ津液ノ多キ年ハ吉トス蜜多シ又風雨フリツゝキ霜威早ク至リ花
少キ年ハ精粋ノ液汁モ少シ凶トス其凶年ニハ無能ノ黒蜂多ク雑り
生スル事アリ鳥黐ヲ以テサシ取尽クシ殺スベシ土蜂ニアヤカリテ此モノ生ス
ルモノナリ群臣ヨク君命ヲ守ク子ヨク父ノ令ヲ受ケ孜々トシテ蜜ヲ醸
成ス事ヲ勤メ其業ヲ守リテ昼夜□*2辛スル事人倫企及所ニアラズ其
醸シナス蜜ヲ貯ムルヤ一半ハ人ノ為ニ最初ヨリ儲ケナスカ如シ有情万霊ノ長タル
人倫堅ク兼約メ一年二年ハ人ノ為ニ辛苦スベシ長クツゝク事アルベカラズ
是ニヨリテ此物ノ瑞奇タルヲ知ル因テ此虫譜ノ巻首ニ載テ弘ク人ニ知ラシ
ムルノミ

書き下し

陳�綮卮訶漸峩星礁�蜂身短而脚長尾有鋒螫聚蜂内有一
蜂王形独大且不螫人毎日群蜂両朝名曰蜂衛頗有君臣之
義無王即衆蜂皆死若有二王其一必分分出時老蜂王及遜
位而出衆蜂均㨍其半畧無多寡従王出者不復回旧房出
則群蜂擁護其王不令人見当採花時一半守房一半挨次
出採如掠花少者受罰但採各花鬚俱用甕足挟ニ花珠
惟採蘭花則必背負一珠以此貢献其王又有蜂将不善往外
採花但能醸蜜至七八月間蜂将蓋死若不死則蜜皆被
蜂将食去衆蜂必饑故俗諺云将蜂活過冬蜂族必皆空亦異也

陳�綮卮訶舛垢覯峩星勝¬�蜂身短く而して脚長し。尾有り鋒として螫す。衆蜂内に一蜂有り
王の形独り大且人を螫さず。毎日群蜂、両朝明曰く蜂衛頗る君臣の義有り、
王無則ち衆蜂皆死ぬ。若し二王あらば其の一必ず分かれる。分れ出る時、老蜂王遜位に及び
而して出る衆蜂均しく幇ず其の半略多寡無し。王に従いて王と出る者（翻訳中

現代語訳

群れの蜂がこれ（前ページ無理やり中に入ろうとする蜂）を刺し殺す。*3
また雨風で巣箱が水浸しになったり身分の低い者*4
がたびたび巣箱をのぞいたり、糞便の穢れた気が巣箱に満ちたり、巣箱を壊したりする事がある。
スズメバチや蟻蛛*5などが巣箱の中に集まる事がある。喪に服している人や、生理中の女性などが
近くで見ると、群れの蜂が皆さって帰ってこない。もし、新しく巣箱を作って、清潔にすれば
帰ってくる事もある。
また何かにつけて、巣箱いっぱいの群れ蜂がみな死んでしまう事もよくある。
なので、巣箱を置いてある家は慎戒べきである*6各々身を清めた後である事、
右の図から察するべきである。中国にも同じような説がある。左に挙げる。

漢文翻訳中

多くの場合蜂蜜は年によって得られる量が多かったり少なかったりする。天気が穏やかで
次の春梅の花が多く咲き花の蜜が多い年はよい。蜜も多い。また雨風が降り続き、霜が早くおりて
花が少ない年は清らかな液も少なくよくない。そういう年は何もしない黒い蜂*7が多く混ざって
出て来る事がある。トリモチ*8でとって、ことごとく殺すべきである。土蜂*9に影響をうけ、この蜂が出て来る。
群れの家来はよく王の命令をまもり、日夜苦心するのは人間の考えが及ぶ事ではない。
蜜を作って貯めるのも半分は人の為に最初から作っているかのようである。
あらゆる生物と霊の頂点である人倫をよく守るので、人の為に頑張る事を契約させるのは一二年にして、
長く続けることはあってはならない。
そういう訳で、この不思議なことをしり、この虫譜の巻の初めに載せて広く人にしらせたいと思う所である。

備考

とにかく蜜蜂の功績を広く知らしめたいという勢いが感じられる。
蜂が千虫譜の最初に紹介すべき虫であるという記述は二度目である。

蜜を含んでこない蜂を門衛が追い払うというのは、おそらく盗蜂で、他の巣の蜂のことだろう。