棚へ上げて祝う事がある。なので、薬屋でたくさん得る事はむずかしい。だからずる賢い商人は別にこのものを作る
為に最初から蚕を飼う者もいる。この蚕が繭を作ろうとする前、全身が金色に
なり喉も透明になったら、専用の鍋で炒って殺して石灰をまぶして日光で乾かす
という。薬師の多くはこの偽造の白殭蚕で利益を得るという。白いのは自然に白く黴
た様で、折れば、堅く透明で琥珀の様な物を本物とする。その白が白すぎ
て粉をまぶした様で折れば内に蚕沙
*1を含んで黒色なのは全く堅くならず、これは
本物ではない。本草彙言に「※翻訳中〜
〜
〜」といっている。また、天工開物にも「※翻訳中〜
〜
〜」とある。○烏爛蚕 近州
*2にて、タリコと呼ぶ。黒く腐ったのをいう。これ
が白殭蚕にまざる事があるので、よく選び取り去ること。○蚕蛻 カイコノキヌという。これは、蚕の
眠る度に脱皮する古い皮である。佛退、或いは馬明退などの名がある。中国では
使うが、日本では用いる事はない。○原蚕 和名ナツゴである。晩蚕、魏蚕、夏蚕、
熱蚕などの名がある。正字通
*3に蝩と名がついている。六月中旬の頃
春蚕の産み付けた卵は
初めは白く形は円で、頭にかすかな突起がある。三日程たつと、色が黄色に変わって形が平らになりへこむ。
また四日ほどたつと色は浅黒く、かすかに紫に変わる。さらに日をへて、頭が尖り黒く変わり、ようやく
真っ黒となって、一日を経て、卵を破って小さい幼虫がでてくる。これから、ようやく成長し、四度眠起して
繭を作り蛾になるのは春蚕と同じである。ただその日数が早い。薬用に蛾と沙(糞)とを
用いる。江戸では「二度がえりヲコ」という。時珍
*4がいうには、
ニ鄭玄注周礼
*5いう原は再であり所謂
再養のものであるという。宗奭
*6いわく、「翻訳中〜
〜」といっている。
私はかつて、これを飼う事があったが
その蚕はぎょうぎが悪く、箔の上にのみいる事がなく、屋根の角などにはいのぼり、まぶしをあてがう
のを待たず、障子戸の角などにはって繭を作り、二匹の蚕が一つの繭に入り、三四匹の蚕が一つの繭に
入る。その繭は柔らかく、薄く、平べったかった。其の性質は悪かった。強い糸にはならず、
皆綿にしたけれども、性質が弱い。烏犀圓
*7の作り方の中に、晩蚕蛾がある。一粒金丹
*8にも入る。
その早く再びかえる事をその効果にとりいれている。
雄の蛾を選んで薬用にするとあるけれども、雄ばかりは得るのがむずかしい。
雌雄共に用いるべきだ。その新鮮なのを選ぶべきである。およそ蚕の雌は
最初から卵を腹に一杯なので、交尾を待ってば、よく卵を産み、その卵もよく生育する。○蚕
沙 和名抄にコクソと言われている。原蚕沙はナツゴのコクソである。古今医統
*9に、馬鳴
肝という。程齋医抄撮要
*10では夏金沙の名があり、本草彙言
*11には、蚕沙は即ち、
蚕の糞で、晩蚕は良いという。本経逢原
*12に「翻訳中〜
〜」
ここに私は用いる変わった方法が覚えがある。ここに挙げる。蚕(沙の――次ページに続く