千虫譜ウィキ - 原本A1-48


原本B

生物情報

チャタテムシ

翻刻

カクレザト コト々ムシ チャタテムシトモ云胡麻子ヨリ小ナリフル
い障子の紙の上にいて、口辺りの丸いバチ*1で叩いて音を出す。多い時は小雨の音の様だ。
夏秋や蒸し暑い雨で湿気る頃に音をだす。風通しのいい所には湧かない。
唐の李石が書いた続博物志*2では人家に
たいへん小さい虫がいるが、而響甚尋之
卒不可見號竊*3虫の大きさは胡麻ぐらいで
形はワラジムシに似て白い角を一対持っていて
其の頭を振って、音を出す。孟康朝*4作賦比
之鬼魁又明陳留*5謝肇淛*6
五雑組*7では浙中郡*8*9なめる小さな虫がいる。有小虫
スクモムシ*10に似て、針の尾ぐらいに小さい。窓の縁を好み
よく紙を叩き音を出す。静かに聞くと
水が下たる音然跡之輙躍此亦焦螟之*11
類欤

書き下し

唐李石続博物志云人家
有小虫至微而響甚尋之
卒不可見號竊虫大如半胡
麻形似鼠婦有両角白色振
其頭則有声孟康朝作賦比
之鬼魁又明陳留謝肇淛
五雑組云浙中郡斎嘗有小虫
似蠐螬而小如針尾好縁髪窓
間能以是敲紙作声静聴之如
滴水然跡之輙躍此亦焦螟之
類欤

現代語訳

カクレザト コト々ムシ チャタテムシともいう。胡麻より小さく古
障子ノ紙上ニ有テ吻辺の丸キバチニテ敲テ声ヲナス多キ時時雨声ノ如
シ夏秋蒸暑雨湿ノ時節ニ声ヲナス風透ノ處ニハ不生
唐李石続博物志云人家
有小虫至微而響甚尋之
卒不可見號竊虫大如半胡
麻形似鼠婦有両角白色振
其頭則有声孟康朝作賦比
之鬼魁又明陳留謝肇淛
五雑組云浙中郡斎嘗有小虫
似蠐螬而小如針尾好縁髪窓
間能以是敲紙作声静聴之如
滴水然跡之輙躍此亦焦螟之
類欤

備考

チャタテムシの名前の由来。茶をたてるようなサッサッという音を立てると考えられていた。
実際はアズキアライの音と思われる。
描かれるチャタテムシの大きさから、これも顕微鏡で写した物と見える。