千虫譜ウィキ - 原本A1-54


原本B

生物情報

翻刻

(右上)
龍虱一種羽州米澤ノ産也
方言ガムシ水中ニ産ス俚人
醬油にて煮ツケ焙リ食フ味
美ナリ
ト云

(右下)
明和四五月
水蠆
異品

(中)
ワカシユトンボ
ヒメトンボ

(左)
俗名ヤゴ時アリテ殻
ヲ脱シテ羽化ス鬼ヤンマ
ニ化シテ高飛ス
其頭ハ別ニハナレテ
モヌケルモノ也下ニ
図スル処ノ如シ

(上段)
寛政中 尾張彈正殿家蔵図也
小子借来而写畢

筥根湖水中ノ
産其乾枯スルモ
ノ雌雄一対トナシ
テ薬肆ニテ買モ
ノコレナリ雌ナルモ
ノ腹大ニシテ黄子アリ
小児五疳ニ酒ニ浸シ焙リ
香クシテ用ユ又労咳ニ
用テ其功蛤蚧ニ不劣
ト云

(下段)
サンセウ魚 物理小識ノ黒魚ナリ越後俗ニ
千貫ムシト云其腹下紫赤色因テ赤ハラ共云活
スルモノ人
ノ見ル事ナ
キモノナリ
行事遅シ
清泉ニ生
螈蠑ノ死
水ニ住ト
異ナリ

書き下し

現代語訳

(右上)
龍虱の一種。羽州*1米澤産である。
方言ガムシ。水中で採れる。田舎の人は
醬油で煮つけて、あぶって食べる。味は
おいしい
という。

(右下)
明和四*2五月
水蠆*3
異品

(中)
ワカシュトンボ*4
ヒメトンボ

(左)
俗名ヤゴの時があって、殻
を脱いで、羽化した。鬼ヤンマ
になって高く飛んだ。
その頭は別にはなれて
脱いだものである。下に
図する。

(上段)
寛政*5中 尾張*6彈正*7殿家が蔵していた図である。
自分が借りてきて写した物である。

箱根の湖水の中で
採れる。その乾燥させたも
の雌雄一対として、
薬屋でかうのも
これである。雌は
腹大きく、黄子*8があり
小児五疳*9に酒に浸してあぶり
香ばしくして用いるまた、労咳*10
使うと、その功蛤蚧*11におとらない
という。

(下段)
サンセウ魚 物理小識*12の黒魚にあたる。越後*13俗に
千貫ムシという。その腹の下は赤紫色なので、赤ハラともいう。生
きているのを人
が見る事のな
い物である。
動きはのろく、
清らかな泉に棲息するのは
螈蠑*14の流れのない
水に住むのと
異なる

備考

ヤゴの記載が散っており、かつ絵の正確さにかける為、要精査。
ガムシの記載もほぼ同じ物が二つほどある。