千虫譜ウィキ - 原本A1-65


原本B

生物情報

ジャノメチョウの一種 ?蛾 ホシベッコウカギバ? オオスカシバ

翻刻

蛾 文政十三庚寅四月十七日ニマユヨリ
出マユニテ虫取沙ニテハル小□ニ入
御次へ御預ケニナリタルニマユヲヤブリ
テ此蝶出ル子ヲウム白色深緑ノ
斑文アリ

(左頁上段)
未九月十四日写真
蛾異品
七八月の頃稀ニ
アリ其羽透明ニシテ虻虫
ノ如シ昼ハ
草葉ノ背ニ眠リ黄
昏ノ時飛巡テ
花露ヲ吸事
天蛾俗名夕
顔別当ト云モノニ同シ
其飛翔スル事極テ捷疾ニシテ捕ヘカタキモ
ノナリ

(左頁下段)
透俵ト云マユノ内ヨリ出
ル其身ニ粉アリ羽ハ透明ナリ

書き下し

現代語訳

蛾 文政十三庚寅四月十七日にマユより
出る。繭の時とって、虫取り網の紗をはった小□*1に入
御次*2へ預ておいたら、マユをやぶり
このチョウが出てきた。そして卵をうんだ。卵は白色で深緑の
まだら模様があった。

(左頁上段)
未九月十四日写生
蛾の珍しいもの。
七八月の頃、稀に
見る。その羽はすきとおっていて、アブ
のようだ。昼は
草葉の陰で眠って、
夕方、飛回って
花の蜜を吸うのは
天蛾*3俗名
夕顔別当と同じ
その、飛ぶ様子は大変すばやくつかまえるのが
むずかしい。

(左頁下段)
透俵*4というマユの中から出
るその身に粉があり羽は透明である

備考

スカシダワラは楠蚕の項参照。通常オオスカシバの幼虫は
土中に薄い繭をはって、泥をまとったような繭を作るが、
これは幼虫から育成したのだろう、薄い繭がスカシダワラ状になったと考えられる。