ワレカラ尾州
*1産。その地の方言である。これは一
種の水虫で、ノリ又はジャコの中に混ざって
採れるものである。一寸
*2または、寸半
*3くらいあり、ニ
寸
*4になるものも、結構ある。色は緑色。時々
黄ばんでいるのは、色も形も別種とわけるのが
むずかしい。 工
*5その為、「ワレカラを食わない僧
侶もいない」と言うのは能登国
*6
人が広く知ることわざであるらしい。輪池先生
*7
別に詳しい説がある。見るべき。紀
伊国
*8ではワレカラは藻の中に
にすむ小さい貝であるという。これも一説である。しかし、
藻に生きている虫の説の方がふさわしいと思う。
上図は尾張
*9の人で植松忠右門有信と言う人
が屋代氏へ写して贈るものであるという
*10
蠲 ホタルムシ
五六月、池や沼の泥の中にいる。
形は平で、黒色、小さい刺がある。
昼は眠っていて、夜
うごうごしだし、尾の下を
光らせる。蛍火と
おなじである。本綱
*11弘景((陶 弘景))云
これは腐った葉や、腐った竹の根ところで脱皮した時、蛹の腹の下は
すでに光っている。数日後、羽化して、よく飛ぶようになるというのは、これである。
時珍
*12がいうに、ウジ、イモムシの様で長く、尾に光があり、羽がなく飛べない一種で、
蠲という。俗名、蛍蛆、明堂月令
*13がいう所
腐った草が蠲になる云々。今よく見るに
蛆の様で、動く時はヒルのようだ
鎮江府志
*14でいうところの、水蛍、水の中に居るのが、これにあたる。
△ワレカラ これは海中の藻にすむ小さい虫である。形は此物海中藻ニスム小虫ナリ形
水虱
*15に似ている。また、小エビにもにている。足が多く、水を離れて飛びあがる。
私が幼い時の実の父藍水が書き写した、佐州採薬録
*16にある図をここに
載せる。