千虫譜ウィキ - 原本A1-86


原本B

生物情報

翻刻

ワレカラ
貝原翁ノ説小貝ニシテ虫ニ非
ストスコレハ其土地漁人ナ
トノ方言ニテワレカラト云
ニヨル乎因テ其物
図ニシテ違ヒア
リコヽニ図ス
ルハ筑紫ニテ採スル処ノ
ワレカラナ
ルベシ

大和本草云ワレカラ古歌ニヨエルハ藻ニ住ム虫ナリ又本草約
言ニ曰紫菜其中ニ有小螺螄今按ニワレカラナルベシ藻ニツ
キテ殻の一片ナル螺アリ分殻ノ意ナルヘシフタナキ故ナリ
コレヨメガサラノ小ナルモノナリ 又云ワレカラ海中ノ藻ニスム小貝ナリ古歌ニヨメ
リ色淡黒大サ三四分ニ不過其殻ワレヤスシ形ミソガイナド
ニ似タリ至テ小ナリ此藻ハナゴヤト云淡青色乾ケハ紫色ナリ
日ニ晒セバ変シテ白色トナル可食性ヨロシカラズ或いハ松藻ニモ此貝
アリ松藻ハ長クシテ茎モ大ナリ
 コレモ又一説カラスガイノ小ナルモノヲ指テ云閩書烏稔ト漳州府
志ノ烏粘ナリ

書き下し

現代語訳

ワレカラ
貝原翁*1の説では小貝で虫ではない
という。これは、その土地の漁師らの
方言でワレカラという
からか。というのも、その物
描くと違いがある。
ここに描くのは
筑紫*2で採った
ワレカラである。

大和本草*3云ワレカラが古歌に詠まれているのは藻に住む虫である。また本草約
*4が言うには、紫菜の中に、小さい巻貝があった。思うにこの類がワレカラだろう。
藻について、殻が一片での貝があり、分殻ワカレカラの意味だろう。フタが無いためである。 
これは、ヨメガサラ*5の小さいものである。また古歌に詠まれているワレカラ海中の藻に住む小貝である。
色はうすい黒で大きさ三四分*6その殻はわれやすい。形はミゾガイ等に
似ている。大変小さい。この藻はナゴヤ*7といって、紫色である。
日に晒せば白くなり、食べられるが、そんなに美味しくない。または、松藻*8にもこの貝は
ついている。松藻は長く、茎も太い。
 カラスガイの小さいものであるという説もある。閩書では烏稔。漳州府
*9の烏粘である。

備考

ワレカラの語源を、「カラがワレやすい」として、
地方によって藻につく薄い小さい貝類一般を
ワレカラと呼んでいたようであると、
丹洲は解釈しているようだ。