千虫譜ウィキ - 原本A1-88


原本B

生物情報

翻刻

木蛭 木ヒル 山ビルト云信州木曽山中伊豆ノ天城山等ニ多
シ旅人ノ足音ヲ聞テ喬木ノ巔頂ヨリ落ル事雨ノ如シ人ノ
襟及ヒモ■引ノ内ヘ入ヲ不覚痒ヲ掻トキ始テ血ヲ吸ハルヽ事
ヲ知ル毛竅に■入レハ取去ルトキ出血不止其毒遂ニ瘡ヲナ
ス可畏モノナリ其毒ヲ被ムルモノ辰砂龍□入タル丹薬
ヲ伝レハ立処ニ痒痛腫■(火へん+白+欠)癒ルモノナリ藍染ノ布并ニ烟
草ノヤニ其毒ヲ解ス此物水産ノ者ヨリ形小ニシテ図ノ
如シ

木蛭

水蛭

度古一名 
   土蠱
コウガイヒル
ツチヒル  加賀
ツラスバリ 近江
スハタ   肥後

書き下し

現代語訳

木蛭 木ヒル 山ビルという。信州*1木曽山中、伊豆ノ天城山等に多
い。旅人の足音を聞いて、高い木の上雨のように落ちてくる。人の
服のえりや、モ■引*2の中へ入るのに気付かない。痒みをかくとき、初めて血を吸われている事が
わかる。毛穴に■*3入れば、とった後血が止まらず、その毒はその後腫れを引き起こす。
恐るべき存在である。その毒をうけたものは、辰砂(水銀の鉱物)龍□*4入っている丹薬
を伝レハ*5たちまち痒みと痛み腫れは治る。藍染の布にタバコ
のヤニを併せたものも、毒を治す。このヒルは水生の者より小さく姿は図のようなものだ。

木蛭

水蛭

度古一名 
   土蠱
コウガイヒル
ツチヒル  加賀*6
ツラスバリ 近江*7
スハタ   肥後*8

備考

辰砂は水銀の鉱物である。人体に有害な物質を含むのだが、
古代の漢方にはよく配合されていた。
現代日本で処方されるのかどうかまではわからない。専門家の意見を待つ。