千虫譜ウィキ - 原本A1-89


原本B

生物情報

翻刻

(右頁上段)
水蛭 血ヲ吸モノ形フクレ
丸シ図ノ如シ

(右頁下段)
一種赤褐色

(左頁上段)
馬蚿 一名百足 銭龍 幾輔懸志
オサムシ 京 ヤステ 江戸
アマヒコ エンザムシ 摂津
ゼニムシ 周防

コレニ触レハ輪ノ如ク丸ク蟠曲ス暫ク
動カズ悪臭アリ京師ノモノハ黒斑ナク
総身赤褐色ニシテ形大ナリ

(左頁下段)
蚰蜒 一名螾■(行がまえに虫)一名入耳 尓雅
ホソムカデ
ナガムカデ
唐山ノ書ニ蚰
蜒入耳ト云テ
恐懼スルモノハ
此物ヲ指テ云
ナリヤセムカデ
ト云下湿ノ地ニ生
ス尓雅郭注蚰蜒
䟽ニ此虫象蜈蚣
黄色而細長
呼為吐古尓
雅蚰蜒大
者如釵股色正
黄其足無数如蜈蚣状

鎮江府志云
蚰蜒状如小
蜈蚣而身円
不扁尾後禿
而無岐多足
好脂油香故
入耳淮南
子云菖蒲去
蚤虱而来
蛉蛩即是

書き下し

現代語訳

(右頁上段)
水蛭 血を吸ったもの。形はふくれて
図のように丸い

(右頁下段)
一種、赤褐色のもの

(左頁上段)
馬蚿 一名百足 銭龍 幾輔懸志*1
オサムシ 京*2 ヤステ 江戸*3
アマヒコ エンザムシ 摂津*4
ゼニムシ 周防*5

これに触れると輪のように丸くまるまる。しばらく
動かない。悪臭がある。 動カズ悪臭アリ京都の物は黒い斑がなく
全身赤褐色で形も大きい

(左頁下段)
蚰蜒 一名螾■(行がまえに虫)一名入耳 尓雅*6
ホソムカデ
ナガムカデ
中国の書に蚰
蜒入耳といって
恐怖するものは
これを指していう
ヤセムカデ
という。湿り気のある地にい
る。尓雅郭注*7蚰蜒
ざっくりいうと、蜈蚣を姿に似て、
黄色で細長
ため吐古と呼ぶ。尓
*8では蚰蜒は大きく
かんざしのまたのようで、色は
黄色で足は蜈蚣のようにたくさんある。

鎮江府志*9では
蚰蜒ちいさい
蜈蚣の姿で、体は丸く
平らでない。後ろの尾は禿ていて
股がなく足は多い。
油類の香りを好むため
耳に入るという。淮南
*10では菖蒲
蚤虱を遠ざけるすると、来る
蛉蛩がこれである。

備考

A本で交尾するヤスデはB本では一匹のヤスデしか
描かれていない。写し間違えか?

ヤスデについて
おそらくヤケヤスデの仲間だと思うが、種類が多すぎて素人には同定が困難。
専門家の助言を待ちたい。
関東の物には黒い斑があり、関西(京都)のもには斑が無く全身が赤褐色という
が、関東に住んでこの方編者は斑のあるヤケヤスデは見た事がない…

ムカデについて
こちらも種類が大すぎ、図だけで同定するのはプロでも困難かもしれない。
基本的に機動力が低いので、地域化も激しそうである。
引用されている書物の国と本国とでは種が大いに違う可能性が高い。
特に、この通商ホソムカデは、蚰蜒と蜈蚣の混同がある。
また、鎮江府志の引用は、「体が丸みを帯び、平たくない」
「尾はつるりとして、岐(曳航肢エイコウシ。敵に襲われた時、動かし頭に擬態する)が無いという事から
ヤスデの仲間ではないかと推測できる。

専門家の助言を待つ。