舡魚 蛮名 ヒツセナーチクス 右ノ図蛮書
落立弟篤中にあり、直に写した。
本国では俗に
章魚舩と呼ぶ。また、一名
貝章魚という。この貝殻を介類に入れる。
紀州では葵貝
*1という。小さいものを乙姫貝
*2という。日本諸国で海中で採れる。
大きいものは、六七寸
*3小さなものは、ニ三寸
*4純白で形はオウムガイの様で、薄く脆く
美しく照り輝く様は、まるで硝子で作った物の様だ。玲瓏恰モ硝子ヲ以テ製造スルモノニ似タリ文理アリテ
*5尾は畝に
なる。およそ秋海棠
*6の葉の紋脈にそっくりである。大切に観賞するのに値する。中に一匹の
小さいタコが寄り住んでいるが、六本の手を殻の肩に出し、両足を殻の後ろに突っ張って
櫂竿
*7ノ形をする。海面を自在に泳ぎ行く。本当に、珍しい
ものである。このタコは外から来たものではない。この貝の肉である。月を経て大きく
なるに、したがって、この貝も大きくなるものである。タコが船に乗っているのに、似ているので
この名がある。去年、津軽の海浜に、この物一日に、数百群をなすことが