千虫譜ウィキ - 原本A2-37


原本B

生物情報

翻刻

(右頁上段)
千人揑 閩書南産志引宋志云
千人擘状如小蟹人力劈之不
開ト云是也
本名ハ蚌江 本鋼蟹集解中ニ出ス
マメガニ コブシガニ
筑紫方言

(右頁下段)
藻ガニ

(左頁上段)
蝲蛄 奥州南部津軽ノ谷
川ニ多シ近来蝦夷ニ
多シ 喜テ却行ス故ニサリガニト云

(左頁下段)
大ナルモノ右ノ図ノ如シ蝦夷地
ヨリ活スルモノ己巳ノ冬月将来
スルモノヲ見タリ冬蟄ノ時ハ遠方
モチ来リテモサノミ痛マズ春ニ至レ
バ多クハ殯スルモノトナリ蝦夷方言シ
ヤリカニト云冬月蟄スルモノ腹中ニ白石
一対アルモノアリナキモアリ是ヲクリカン

書き下し

現代語訳

(右頁上段)
千人揑 閩書南産志引*1宋志*2
「千人擘」姿は小カニのようだが、人力でつぶして、開かず
というのはこれの事である。
本名ハ「蚌江」 本鋼蟹集解中に出ている。
マメガニ コブシガニ
筑紫*3方言

(右頁下段)
藻ガニ

(左頁上段)
蝲蛄 奥州*4南部津軽ノ谷
川ニ多シもともと蝦夷*5
多い。 好んで、後ずさる為、サリガニという。

(左頁下段)
大きいものは、右の図のようである。蝦夷地*6
から生きている物を、己巳*7の冬持ってこられた
ものを見た。冬眠の時は遠い地から
もって来きても、そんなに痛まず、春になって、
多く死にかけている様子だった。蝦夷方言シ
ヤリカニという。冬には冬眠するものの、腹の中に白い結石*8
一対あるのもいるし、無いのもいる。これはヲクリカン(次頁に続く)キリである。

備考

時期的にも、形状的にもヤマトザリガニと思われるが、
随分と赤い色付けがされている。
専門家の意見を待ちたい。