千虫譜ウィキ - 原本A2-5


原本B

生物情報

翻刻

(右頁上段)
土膽 異品 池袋村ニテ獲之
形大馬蟻ノ如シ頭長ク背甲紺
青色ニ光ル但甲一枚にしてヒラカサルヲ 異トス
和名抄ニハツヽト
アリ

(右頁中段)
金亀子
コガ子ムシ
緑色金光翅
只褐色而両
脇白点連。

(右ページ下段)
夏ハ野薔薇 秋ハ升麻
ノ花ニツキ花ノ害ヲナス
モノコガ子ムシノ類ニテ
背甲上渋毛アリ又千辨
鶯栗花ニ多ク人
陰ヲ見レハ遠ニ飛去ル事△

△ウリバイノ如シ

(左頁上段)
ハラ緑色ニシテ黄バミアリ
中通星アリ黒点ナリ

(左頁下段)
カウヤヒジリ 北条ムシ 菽藿ノ葉上
ニ多ク衆ル 又葛葉ヲ啖フ大毒ア
リ芫青ニ等シ 葛上亭長 上総方言
北条ムシ蛍ニ似テ堅硬黒甲ニ三行ノ細
白條アリ 豆藿及
葉ヲ啖
其毒至テ猛烈ト云

葛上亭長 ハゼムシ サルボウ

書き下し

現代語訳

(右頁上段)
土膽 異品 池袋村でこれを獲った。
形は大馬蟻*1のようで、頭が長く、甲は
紺青色ニ光ル。ただし、甲一枚だけで開かないのが他と異なる
和名抄*2ニハツツと
ある。

(右頁中段)
金亀子
コガネムシ
緑色で金に光る翅。
只褐色で両
脇に白い点がつらなる。

(右ページ下段)
夏はノバラ 秋はショウマ
の花について、花に害を出す
虫。コガネムシ類で
背の甲上に渋毛がある。また、又千辨
鶯栗花*3に多く、人
陰を見ると遠くに飛び去るのは△

△ウリハムシのようでもある。

(左頁上段)
腹は緑色で黄ばんでいる。
中通に星がある。黒点である。

(左頁下段)
コウヤヒジリ 北条ムシ 菽藿*4ノ葉の上
に多く集まる。 またクズの葉を食う。芫青と同じくらいの
猛毒がある。
葛上亭長 上総方言*5
北条ムシ。ホタルに似て、黒く堅い甲に、三列の細い
白い線がある 豆藿*6および
葉を食う
その毒は大変猛烈という。

葛上亭長 ハゼムシ サルボウなどとも呼ぶ。

備考

右頁上段はマイマイカブリであろう。
下羽が退化し飛ぶことができない。地域によって
色に変化がある。ただ、堅い前羽背にくっつき開かないだけで、
一枚でなく二枚ある。(潰れされた時などに割れて見える)

右頁中段、下段は
コガネムシの仲間だが、詳細は不明。専門家の意見を待ちたい。

(左頁上段)不詳。ハムシの一種にみえるが、専門家の意見を待つ。

(左頁下段)コウヤヒジリは、マメハンミョウのことであろう。
莞青と同じく刺激を受けるとカンタジリンの含まれた毒液を出し水疱ができるので、
ハゼムシ等の名前がついたのだろう。