午年、七月二十三日写す。ササムシ
ツユムシ春夏のとき、月夜ススキの柔らかい葉の
上にいて、澄んだ音を高く響かせ、清亮高響
切れ目なく、耳を貫かれるような
ものは、これだ。
喓々草蟲
*1 草螽 事物紺珠
*2―ハイナゴの仲間で珍しい音を出すと云うもの
はこれである。京都ではツユムシという。江戸ではクビキリバッタという。このもの、口が赤いので
ちなんで土州
*3ではアカクチという。讃州
*4ではリンリンという。この物にかぎって冬月
もちこたえて、
春に啼くのが
早い。私は往年
厳冬期に麦門
冬
*5くさむらの
中にこの
虫、さかさまに
なって根の
白い所にかみついているのを、よくみた。火のあたる地の
青草ある所には、いるものである。小焚
*6中で飼っていたが啼く
事はなかった。野にいても、月夜の涼しさに乗じてのびのびとした
時に声を出すから、玩物ニ致シ■シ