千虫譜ウィキ - 原本A2-68


原本B

生物情報

翻刻

(右頁)
蠨蛸在戸
蠨蛸 一名長踦 和名鈔ニアシタカクモ
長跂 正字通 筑后ニテチヤヒギグモト云
アシナガグモ人ヲ咬ハ大毒アリ赤腫ヲナシ
寒熱ヲ発ス此モノ糸ヲ出サズ前手二本
長ク鬚ノ如シ
往事遅シ
正字通跂欠
衣切音渓長
足虫即蠨蛸
長股者一名足跂詩䟽長踦
河内人謂之喜母
此虫一目ニ〆糸なし地上
ヲ行ク事瞽者メクラノ状ヲ以テ
サグリ行状ニ似タリ故ニ俗ニザトウグモト呼フ

(右頁下)
赤グモ 未七月三日行
燈ノ火ヲ慕テ出

走る事捷シ糸ヲ出
サズ

(左頁)
同前

王子滝ノ川ノ産スルモノ
一躰小脚殊更ホソクフシ白シ

書き下し

現代語訳

(右頁)
蠨蛸在戸*1
蠨蛸 一名長踦 和名鈔*2ニアシタカクモ
長跂 正字通*3 筑後*4ではチヤヒギグモという
アシナガグモが人を咬めば、すごい毒があり赤く腫あがり、
寒熱*5を発する。このもの、糸を出さず、前の手二本は
長く鬚のようである。
歩くのはおそい。
正字通*6跂欠
衣切音渓長
足虫すなわち蠨蛸
長股者一名足跂詩䟽長踦*7
河内*8の人はこれを喜母*9
この虫目が一つしかなく、糸が無い、地上
を行く時の様子が瞽者メクラの様子でもって
サグリながら行く様子ににているので、ザトウグモとも呼ぶ。

(右頁下)
赤グモ 未七月三日行
燈の火をしたって出る。

走るのがはやい。糸を出
さない。

(左頁)
同前*10

王子滝の川でとれたものは、
体が小さく、足は特にほそく、節が白い。

備考

ザトウムシかユウレイグモの仲間に見えるが、
現代では記述されるようなひどい毒はない。
そのような毒があると当時信じられていた
という事だろう