千虫譜ウィキ - 原本A2-73


原本B

生物情報

翻刻

莫予荓蜂 虎頭蜂 薬性奇方
ヤマバチ山中木石上或ハ寺院簷下ニ巣ヲ作ル円長大小一般ナラズ
大ナルハ二尺ニ至ル褐赤黒白ノ斑アリテ巻雲文ヲナス外皮ヲ破見レハ
中ニ巣ヲ造ル事数層
ヲナス薬用ニ供スルニ
ハ雨露ノカヽリタルヲ
宜トス故ニ露蜂房ト云

竹蜂 竹葦ノ節ヲ中央ニ留メ両頭ニ孔ヲ開キ図ノ如ク〆簷頭ニ束
挿〆ハ不残蜜ヲツメ卵ヲ其中ニ養フ蜂ハ蜜蜂ノ如クニ〆小ナリ後
ニ卵大クナレハ蜜乾キテ黄粉トナル何埜良以此蜂ノ巣ノ中ノ蜜ヲ
試シニ甘美ニシテ淡シ同人予ニ贈ル因テ直ニ図スル処ナリ此巣ヲ作ルニ
似我ノ声ヲナス亦蠮螉ノ類ニ〆小ナルモノナリ

書き下し

現代語訳

莫予荓蜂*1 虎頭蜂 薬性奇方*2
ヤマバチは山中の木石上、あるいは寺院ののきしたに、巣をつくる。円長大小一様ではない
大きいものは、二尺*3にもなる。赤茶、黒白の斑があって、雲のような文がある。外側を破ってみると
中に巣をつくっている。それは数層 
になっている。薬用にもちいるには、
雨露のかかった物が
いいとする。なので、露蜂房という。

竹蜂 竹や葦の節を中央に残して、両の頭に穴を開けて、図のようにして、軒先に束を
差し込めば、残らず蜜をつめて、卵を、その中で育てる。蜂は蜜蜂のようで小さい。後
に卵が大きくなると、蜜は乾いて、黄色い粉になる。何埜良以*4このハチの巣の中の蜜を
ためしてみるに、甘くおいしいく、あっさりしている。同じ人が、私に贈ってきたので、すぐに描いた所である。 この巣を作るのに
似我*5の声をだすので、蠮螉*6の類で小さいものである。

備考

おそらくクマバチの巣であるが、
ツチバチの類がこの巣を作ったと勘違いしているようだ。