千虫譜ウィキ - 原本A2-75


原本B

生物情報

翻刻

蜾蠃 トクリバチ 七八月ノ頃毉螉ニ似テ小ナル蜂土ヲ用テ巣
ヲ造ル墻垣石碑等ニ粘着スル事柘榴実状ニ似タリ又陶器
ノ形ニ似タリ故ニトクリバチト云螟蛉ヲ牽来リテ巣中ニ
納ル事七八個ニ〆其口ヲ閉ス紙ヲ帖塞スルカ如シ是已カ子生
育ノ際ノ粮ニ充ルナリ破看スレハ
蛆ノ如キ者一ツアリ米粒ヨリ小ナリ
日ヲ重テ漸ク大ニナリ黄白色後ニ蜂
ノ形ニナレハ褐色ノモノ黒色ニナリテ
穴ヲ咬破リテ出飛去ル其子大ナルニ至
ルマテニ螟蛉ノ津液ヲ自然ニ吸取ル
ナリ皆数個ノ螟蛉枯槁スルニ至レハ
蜂子漸ク長大ニ至ル一種小キ蝿虎数
個ヲ竹筒ノ中内ニ納テ其孔口ヲ土
封スルモノアリ倶ニ其子の粮ニ〆呪
〆已カ類トスルニ非ス似我ゞノ声ヲナシ他虫ヲ含来ル
人々観ルニ就テ此説ヲナス綱目珍説ニ
詳ニ辨スル所ノ如


螟蛉有子蜾蠃負之

書き下し

現代語訳

蜾蠃 トクリバチ 七八月ノ頃■*1*2に似て小さい蜂が土を使って巣
を作り、垣根や石碑等に粘着している様子はザクロの実に似ている。また、陶器
の形に似ている。なので、トクリバチという。アオムシを引いて来て、巣の中に
七八個しまって、紙を張り付けるかのように、その口を閉ざす。これは子生
育をやめる際の食べ物にあてるものである。破ってみると、
蛆のような者が一つある。米粒より小さい。
日をかさねて、ようやくおおきくなり、黄白色のあと蜂
の形になると、茶色のものが、黒色になって、
穴を食い破って出て、飛び去る。その子が大きくな
るまでに、アオムシの体液を自然に吸い取る。
皆数個のアオムシがひからびたら、
蜂の子はようやく大きくなる。ある種は、小さいハエトリグモ数
個を竹筒の中の内にしまって、その穴の口を土で
閉じるものもいる。 封スルモノアリ共にその子の食べ物にして、まじないを
でもって、止めて、仲間にするのではない。似我ゞ*3の声を出し、他の虫を含んで来る
のを人々が見て、この説を作った。綱目*4の珍*5の説に
詳しく述べられている所のままである。

螟蛉有子蜾蠃負之*6

備考