千虫譜ウィキ - 原本A2-86


原本B

生物情報

翻刻

(右頁)
宵行 ムシボタル 又云草ボタル夏秋ノ間叢中ニアリ蚕ノ如クハ
ハサミ虫ニモ似タリ尾端白色夜ニ至レハ光アリ蛍火ニ似タリ
鎮江府志蛍有三種一種小而宵飛腹下光明茅根所化也一種尾
後有光無翼不能飛竹根所化也一種水蛍唐李子卿有水蛍賦
正字通云■豳風熠燿宵行註熠燿明不定猊宵行虫名似蚕夜行
喉下有光如蛍

青腰虫

頭ハ平シ尾ハ上ニ向フ
腐臭アリ半身ニ羽ア
リ常ニタヽミテミヘズ時
アリテ飛フ高トビハナ
ラズ此虫又青腰虫
ノ類ナリ文化十三年丙子
八月十八日
西城ヨリ名ヲ尋ニ付青腰虫ノ類和名無之由申上ル

(左頁)
天牛 カミキリムシ 枇杷虫トモ云
寛政十二庚申六月四日雲州内中原一條小左衛門家ニ出障子ヲ
喰破ル音スサマジ色青黄腹ノ方黄褐色ノ毛アリ大サ此図ノ如
シ鬚長サ二寸スギナノ節ノ如シ頭ノ両傍ニ二角アリ錐ノ如ク尖鋭
ナリ当ルベカラズ羽ヲ開テ飛フ其勢鉄壁ヲ破ルカ如

元文五年ノ夏毒
虫出テ多ク人ヲ悩
ス事アリ其虫ヲ
砂セヒゴト云右ノ
虫形状ヲ詳ニセズ
此虫モシ砂セヒゴニ
テハナキヤト里老云ヘイリト云フ

書き下し

現代語訳

宵行 ムシボタル また、草ボタルともいう。夏秋の間、草むらの中にいる。イモムシ状で
ハサミ虫にも似ている。尾のはしが白く、夜になると光り、蛍火に似ている。 
鎮江府志*1蛍には三種ある。一種は小さく、夜飛び腹の下が光、茅の根から生じる。もう一種は尾の
後ろに光があり、翼は無く飛ぶ事はできず、竹の根から生じる。また一種は水蛍で、唐李子卿*2水の中にいる蛍賦*3
正字通*4云■*5豳風*6では熠燿宵行の註に熠燿明不定猊宵行虫名似蚕夜行
喉下有光如蛍*7

青腰虫*8

頭は平たく、尾は上に向いている。
腐ったような匂いがあり、半身に羽があるが、
いつもたたんでいて見えない時が リ常ニタヽミテミヘズ時
あって、飛ぶ。高く飛ぶ事はできない。
此虫は、青腰虫の
の仲間である。文化十三年丙子*9
八月十八日
西城*10から、名を尋ねられたので、青腰無の類で、和名は無しと申し上げた。

(左頁)
天牛 カミキリムシ 枇杷虫ともいう。
寛政十二庚申*11六月四日雲州*12内中原一條小左衛門*13家の家に出て障子を
くい破る音は、すさまじかった。色は青黄*14腹の方は黄褐色の毛がある。大きさは、此図ノとおりである。 
鬚の長さは二寸*15スギナの節のようである。頭の両端に角がある。錐の様に鋭く尖る。
当ってはいけない。羽を開いて飛ぶ勢いは、鉄壁を破るかのようだ。 

元文五年*16の夏、
毒虫が出て、多くの人を悩ます
す事があった。その虫を
砂セイゴという。右の
虫の形は、詳しくはわからない。
此虫がもしや、砂セイゴでは
ないかと、里の老人が言ったという事だ。

備考

青腰の図が似ているB本のページを選んだが、詞書が違う。
別のページのハネカクシか?