千虫譜ウィキ - 原本A2-9


原本B

生物情報

翻刻

(右頁上段)
蝿取グモ一種白褐ニシテ
黒色二條アリ眼朱ニシテ
至テ美ナリ能蝿ヲ取ル
事尋常ノモノ二優レリ
好事ノ人小
匣ニ養腰間
ニ帯テ客対ノ
席ニ蓋ヲ取
シムル事ヲ戯ト
ス能取ルモノヲ
逸物ト名付テ貴重トス云

(右頁下段)
セイタカグモ 七月三日ノ夜燈
火ノ下ニ出ル淡赤褐色スキトオル
走ル事早シ

(左頁)
ツチグモノ一種フクログモアリ長ク巣ヲ作ル事半分ヨリ下ニ深ク
穴ヲナシテ底ニ住ム大葉繭ノ根ニ此巣ヲ結ブモノ
是ナリ

ヒラクモノ一種ニシテ形円ニシテ青黒白
点アリ頭赭色ニシテ脚ハウスキ肉色
ナリ壁銭ノ如キ巣ヲ作テ内ニ居住ス

書き下し

現代語訳

(右頁上段)
ハエトリグモの一種。白褐色で
黒い筋が、二條ある。眼は赤色で
大変美しい。よくハエを取るのが
普通のものより優れていた。
物好きなひとが、
小箱に入れて飼って、腰回りに
身につけて、客をもてなす時、
蓋を
開けさせる事を遊びとする。
よく取ルクモに
逸物と名付て大事するという。

(右頁下段)
セイタカグモ 七月三日ノ夜
明かりの火の下にでる。淡い赤褐色で、透き通る。
走るのが速い。

(左頁)
ツチグモの一種フクログモがいた。長く巣を作る。半分から下に深く
穴をつくって、底に住む。大葉の繭*1の根に、この巣をつくるのが
これである。

ヒラクモノ一種で、形は円く青黒く白
点ある。頭は赤土色で、足はうすい肉色
である。壁銭のような巣を作って、その中に住んでいる。

備考

ハエトリグモの一種、セイタカグモ(現代の名前不明)
ジグモの一種、ヒラタグモの4種のクモが掲載される。