千虫譜ウィキ - 原本A3-26


原本B

生物情報

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(右頁)
白頸蚯蚓 和名カブラミミズト呼フ 和名抄ニ此名見ヘタリミヽズ
ヲ加州ニテメミズト云此物眼ナク見ル事ナシト云事ヨク此名アリト
今此白頸ノモノヲ撰用ユ味殊ニ甜キヲ以テウナギヲ釣ルニ此モノヲ用ユ大
小共ニアリ熱毒ヲ解ス本草ニ丹毒漆瘡ニ此泥ヲ擦ル事アリ今
蜂螫焮其痛不可忍モノに沙糖ヲ和調ヘヲニテ板ノ上ニテ糊ヲ
打スル如クスレハ泥ノ如クニナルヲ
患上ニ塗ル其腫痛忽ニ消解ス轉活
〆代指廩疽等熱毒強盛ノモノニ
塗テ更妙トス
他薬ノ及フ処ニ非
ス蜂螫ニ際ラズ凢諸
毒虫螫ニ傳塗
五六月ノ際
向暑両三日
続キ夜中
土上ニ出テ

(左頁)
朝土ニ入ラ
ズ日乾締壓
扁〆堅硬ス
ルモノ多シ
本草附方
ニ薬用ニ供スル事
ヲ載ス地龍蟠如
銭様者ヲ用ユルヲ良トス嬰童百問ニ銭子地
龍乾ト云コヽニ図スル処ノモノ是ナリ小暑六月ノ節四五日ノ間ニ此モノアリ
本綱所謂千人蹈也

書き下し

現代語訳

白頸蚯蚓 和名カブラミミズと呼ぶ。 和名抄に、この名前がみられる。ミミズ
を加州*1ではメミズという。この虫に眼がなく見ることができないから、この名がありという。 
今、この、首が白いものを選んで用いる。味は特に美味しいので、ウナギを釣るのに、これを用いる。大
小色々ある。熱毒*2を治す。本草*3に丹毒*4漆瘡*5に、この泥を擦り込む事がある。今
蜂刺されの腫れ、その痛みが耐え難いものに、砂糖を調合して、板の上で糊
を練り、泥のようになったのを、
患部の上に塗ると、その腫れ痛みはたちまち解消する。転用
して指の廩疽*6等の熱毒*7のひどいものに
塗るとさらに、効果がある。
他の薬の及ぶところはない。
蜂刺されに限らず、大体もろもろの
毒虫刺されに塗る
五六月の時、
暑い時期に向かう頃、三日間くらい
続き、夜中に
土の上に出て

(左頁)
朝、土に入ら
ず、日に干されて、乾いて締まり、圧迫され
平らになり硬くなった
ものが多い。
本草附方*8
に薬用に使う事
が載っている。地龍蟠
銭のようになっているものを用いるのがいいとする。嬰童百問*9で銭子、地
龍乾という。ここに描いたものは、これである。小暑六月の節四五日の間にこれがあった。
本綱*10でいわゆる千人蹈である。

備考