紫鉚虫 寛政中
*1紅毛舩
*2もってきたもので、オランダ語で
コーセニイレ。大さは碧蝉花
*3 ノ実に、似ている。形は長い物、円い物
色々で、ふぞろい。高さがあり、つまんだような
筋がうねって黒光りしている。漆で
ぬったようである。薄い
ところは、赤くえんじ色を
するものもある。質は硬い。
腹は平たく、へこみ、内側に 腹ハ平ク
巻き込んでいるようなものもある。脚はない。
木枝にくっつく所である。
この虫ニ三粒を、小皿に入れ、熱湯をそそぎいれ、ミョウバンを■
*4すこしばかり
入れれば、たちまち赤い汁が出て、エンジ色になる。煮■
*5詰めて彩
色に用いるべし。虫は皮だけ残るものである。これは、ゼルマ
ニヤ
*6国中からとれる一種の虫の卵
*7で、ヨハンニス
ブルードというもので、今コーセニイレに、ト云モノニ〆今コーセニイレニ仮に充てるもの
である。別に図説があるので、参考にすべし。
(右頁下段)
柚
*8の虫 また臭橘
*9にもつく。五月
から六七月 ヨリ六七月□
*10アリ
卓氏藻林
*11虫類で
いう。唐詩の
「有花暖青牛臥」の句
*12、
注で云、花葉の上の青虫である、
蝸牛のような、二つの角があるように。