千虫譜ウィキ - 原本A3-42


原本B

生物情報

翻刻

(左頁)
水唐 一名水盧 通雅山城方言カハタロウ 但馬ワカロ
東都カツパ
本綱渓鬼虫ノ附録)水虎ナリ按ルニ虫類非ス亀及び鼈ノ属ナ
リ九州地方水中ニ産豊ノ前後最多シ其大サ四五歳ノ小児ノ如シ背ト
腹トニ甲アリ首ヲ打ハ甲中ヘ縮入ス手足モ亦然リ両手ヲ甲中ヘ
縮入スレハ両脚伸出ス事鼈ト異ナル事ナシ遍体粘滑ニ〆捕ヘカタシ
捕レハ青気アリ手ヲ洗浄スレ共脱去スル事ナシト云性相撲ヲ好ム
夏夕納涼ナカラ土人水邊ニ出テミル壮観ナリト云人肝ヲ好ミ食フ
胡瓜ニ人ノ姓名ヲ書テ水ニ流〆其害ヲ免ル
清桐山方以智通雅云水中有物如三四歳小児鱗甲如鮫魚射之不可
入七月中好在磧中自曝膝頭似虎掌爪常没水中出膝頭小児不知
欲取戯弄便殺人有生得者摘其皋厭可以小使名為水唐者也
孫汝澄云皋厭者水虎之势也可為媚薬善使内也
昌蔵按ルニ是一種ノ水妖ニ〆九州水邊此物多アル所ハ夜陰深窓ヲ窺テ
私ニ夫人ト姦通スル事アリ婦人此物ノ為ニ魅惑セラレテ美少年ト思

書き下し

現代語訳

水唐 一名水盧 通雅*1山城*2方言カハタロウ 但馬*3ワカロ
江戸カツパ
本綱*4渓鬼虫の附録*5水虎である。考えるに虫類ではなく、カメやスッポンの仲間である。
九州地方の水中いる。豊の前後*6最も多い。その大さは四五歳の子供のようである。背中と
腹とに、甲羅があり、首を打つと、甲の中に縮んで入る。手足もまた、同じ。両手を甲の中に
縮入れると、両足を伸ばすことは、スッポンと違うところがない。体は平べったく、ねっとりぬめっていて、つかまえるのが難しい。
つかまえると、青臭いにおいがああり、手を洗っても取れないという。性質として、相撲を好む。
夏夕の納涼ナカラ*7現地の人水辺に出て、見ると壮観であるという。人の肝を好んで食べる。
胡瓜に人の姓名を書いて水に流して、その害をよける。
清桐山*8方以智*9通雅*10が言うには、三四歳の子供のようなものが水中にいる。鱗甲は鮫のようでこれを射る事はできない。
入七月中*11好んでかわらにでてきて、自ら虎掌*12に似た膝頭をさらす。爪は常に常水中にしずみ、膝頭を出す。小児不知*13
欲取戯弄便殺人有生得者摘其皋厭可以小使名為水唐者也*14
孫汝澄*15いう、皋厭は水虎の勢である。可為媚薬善使内也*16
私が思うに、これは一種の、水のあやかしで、九州の水辺に、多い所は、夜、窓を除いて、
個人で、夫人と交わる事がある。婦人は、この物の為に、魅了され、美少年と思

備考