(右頁上段)
負子 コオイムシ京都ではヒルメシモチという。 メシモリともいう
汚水の水中あるいは池沼中にいる。形は、タイコウチに
にて、背は青黒く、六脚は黒褐色で、赤色を帯びる。
オスの背の上にメスが卵をうみつけるのだが、粘
着してはなれない。ほどなく、その卵のかなに子が
生じる。一夜にして、30個にもなる。はじめは
白色で、かすかに黄色を帯び、背に一筋の緑色
の所があり、卵をでて、たちどころに水の
中を泳ぎ回る。たいへん素早い。
だんだんに青黒く変色する卵を
負う。最初はハ白色で、透明で、丸い
形であるが、日たつと、長くなり、横から見ると、ハチの巣の
ようで、上から見ると亀甲紋に似ている。また
かすかに茶色に変じると、卵に、頭両眼の黒点がすきとおり
見えるようになる。卵を破って出る所は大変すばやい。
子供がとって、もてあそぶ。キッコウムシという。龍虱
*2とくらべると
甲は柔かである。ミガラの類である。卵はみな、子が孵化した後、甲があって
*3
(右頁下段)
腹ハ中ノスシノ処中高ナリ
(左頁)
石の上で日にさらして、飛ぶ。
事物紺珠
*4に負子の名がある。
江戸方言カッパという。
酉陽雑組
*5がいうには負子は水
虫であると。子を多く負うという。と
いうものはこれである。
かえりたての子を顕微鏡で見たのが下図の
通りである。
卵の形も同じである。頭の方は両眼が透き通りみえる。
全体白く。スク根
*6にくず練りのように透き通る。
ものあり。甲羅に粘着する。