千虫譜ウィキ - 原本A3-50


原本B

生物情報

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(右頁)
蛄蟖 イラムシ
乙亥年重陽日園中ニテトル柿ノ葉ヲ食ヲ*1虫也小□*2中ニテ蓄フニ柿
ノ葉ヲ飼フ四五日
ヲスキテ雀甕ヲ結
テ入ル
鎮江府志云□*3俗名刺
毛其子房名雀甕毛螫
人最毒

(左頁)
右ノ雀甕ヲ小□*4中ニ結成スルモノヲ其マヽニ
貯ヘ釣リ置ル処ニ小穴ヲ穿破リテ小我出テ小□*5
中ニ飛舞ス去亥年重陽後五日ニ結
成スルモノナレハ九月十三日ヨリ当丙子
ノ七月十日マテ二百九十四日目ニ出ノ凢
十一ヶ月三百日ニ近シ蚕蛾ノ比ニ非ス
雀甕 一名天漿子一名棘剛子一名雀児飯甕一名雀癰一名
躁舎小児臍風撮口急慢驚風ノ大奇薬 信州方言スヾメノサカオケ
甲州方言サコケコレサカヲケ略ナラン其土人ツキ目痛不可忍ニ此モノオ破リ
白漿ヲトリ乳汁ニ和〆付立処止平瘥ス

書き下し

現代語訳

蛄蟖 イラムシ
乙亥年*6重陽日*7園中でとる。柿の葉を食う虫である。小□中*8で蓄えている所で柿
の葉で養う四五日
をすぎて、雀甕を結
で入る。
鎮江府志がいうには□*9俗にいう名刺である。
毛虫の房の名は雀甕。毛は人を螫し
すごい毒である。

(左頁)
右の雀甕((イラガの繭))は小□*10中に、作られたもを、そもまま貯めておいて
釣り下げて置いておいたところ、小穴をあけて小さな蛾が出て小□*11
中に飛び舞った。去年の亥年 重陽のあと、五日に
繭になたものが、九月十三日から、今年丙子*12
の七月十日まで294日目に出る。およそ
11ヶ月300日に近い。蚕の比にならない。
雀甕 一名天漿子一名棘剛子一名雀児飯甕一名雀癰一名
躁舎 小児臍風撮口*13急性慢性の驚風*14のよく聞く薬である。 信州方言スズメノサカオケ
甲州方言サコケ。これはサカオケの略だろう。現地の人は、目をついて目の痛みが耐え難いとき、これを破って
中の白い液をとって、乳と混ぜてつければ、たちどころに治る。

備考