千虫譜ウィキ - 原本A3-63


原本B

生物情報

翻刻

(右頁)
ヲコゼ 横笛ト云虫ノ類ナリ青白色ニ〆体柔ナリ透トヲルキミア
リ形状蝉ニ似タリ大サ胡麻子ノ如シ長スルニ随テ尾ニ白毛ヲ生
シ背ノ上ニ負ガ如シ顕微鏡ニテ見タル大ニ図スル大サニ写スモノナリ
其初生ノモノハ白毛ヲ生セザルモノナリ
一種蛾至小ニ〆十月亥ノ子ノ時分晴天ニ飛行スルモノ尾ニ白毛アリモロ
ク白毛抜去ルモノナリ尾州ニテイン
ノコ阿州ニテテンノオバト云
尾白毛ヲ生スルトキ形升麻花ノ如シ
如左図

(左頁)
一種蛾至小ニ〆十月亥ノ子ノ時分晴天ニ飛■■*1モノ尾■*2白毛アリモロク白毛抜
去ルモノナリ尾州ニテインノコ阿州ニテテンオバト云
尾白毛ヲ生スルトキ形升麻花ノ如シ如後図

書き下し

現代語訳

(右頁)
ヲコゼ ヨコバイという虫の仲間である。青白く体は柔らかく透き通り気味である。
形はセミに似ている。大きさは胡麻粒のようで、成長するにしたがって、尾に白毛を生や
し背の上に負うようである。顕微鏡で見ておおきく図した大きさで写したものである。
その、はじめて生まれたものは、白毛を生やしていないものである。
一種蛾のとてもちいさく、十月亥の子のころ、晴天に飛行するものの尾に白毛があり、もろ
く白毛は抜けおちるものである。尾州*3ではイン
ノコ阿州*4ではテンノオバという。
尾に白毛を生する時、形は升麻花*5のようである。
左の図のように

(左頁)
一種蛾のとてもちいさく、十月亥の子のころ、晴天に飛行するものの尾に白毛があり、もろく白毛は抜け
去るものである。尾州*6ではインノコ阿州*7ではテンオバという
尾に白毛を生する時、形は升麻花*8のようである。後の図のように。

備考

左頁に一部欠損がある物の、
内容が右頁終わりとそっくり重複している。
ショウマの花の如くという図は次のページの図をさすものだろう。

また、これはアオバハゴロモの幼虫なので、尻に白い毛の生えた
飛ぶ虫は、いわゆる雪虫、トドノネオオワタムシの仲間だろう。