(右頁)
地膽 その形は馬蟻
*3ニ似ていて、大きい。自首至尾長八九分
*4突眼
*5長いヒゲには
六節あり、足には、共に五節、爪ごとに端はわれている。背の上に短い翼がはえ、全体は黒光りし、紺碧をおびる。
ハンミョウに似て、両脇に、細かい黒い点がある。その毒はハンミョウと異なることはない。其匂いは鼻を刺すようで、この此甲
陽
*6山梨群石森村でとれたもの。現地では俗に呼ぶにはアリノオジイ
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*7
三月二十五日、野シン田
*8の
野でとる地膽
*9の一種
大きいもの。足の根本は
紺青色の光がある。
丁亥
*10四月二日写す。
(左頁)
駿州
*11龍爪山におおくある罌子桐
*12の上にいる虫。全身が黒色で、日に照らすと、紫がかった緑の光がある。加えてこれは
朱色の斑でもって燦然として、見て愛でるに値する。しかし、その毒猛烈に酷く於斑螫
*13という。往年蘭山が其
山所遊び、自ら採集する。
また、思うに、罌子桐は油桐
*14である。俗名ドクエ。この
油が少しでも食物にはいれば、腹痛は悶え乱れるほどで、ひどければ死に
いたる。この物を燈油にているものは、山間部の家にままある。煙
*15を
吸うのに、まちがって、この燈火をもちいると、のどは、たちまち閉塞して呼吸困難になり
死に至ることもある。此葉を干して鼠■
*16ふさげば、出入りしなくなる。細かい粉にして
飯の上に置いて飼うと鼠は死ぬ。大毒のある木である。この葉に
つく虫であるから、その毒は猛烈である事、其毒ノ猛烈ナル事不辨シテ
*17
知るべし。此虫の甲は堅く破壊するのは難しい。丹色
*18の地
に黒い斑があるものもあり、黒い所がルリ色に光る物もあり、
一様ではない。