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莎鶏 ハタヲリムシ 俗にキリギリス ギスともいう。
赤色が多くいる。青色のものも多くいる。莎草
*1の上、稷黍(キビ、アワ)穂の上に好てすむ。きびしい暑さ
の時、さかんに羽を振るわせて鳴く様は機をせかして織るようである。
それにちなんで、ハタオリの呼び名がある。白露
が下りるころになると、声はきこえない。その虫
も、また疲労して、動かない。
六七月の間鳴くだけである。
小さな火の側でやしなうのに、キュウリを
やる為に、ウリクイ虫と
いう。頭は馬のようにして、形は丸い。
口の辺に髭が二本は長く、二本は
短い。節があって、小さな脚に似ている。
一種やぶの内の木枝の上にいるもので
声が大きくはっきり長くなく物を、俗にヤブキ
リという。形が少し大きく、羽も長く
鳴くのも俗にヤブキリトいう。
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形すこし大きく羽が長く前進緑色である。これは、古くはクダマキという虫である。ハタオ
リを俗にシバキリと呼ぶ。
再按ニ此物帝京景物略ニ所載ノ呌螞
蚱ナリ形状モ能説得タリ
詩豳風六月莎鶏振羽
*2陸璣
*3がいうには、イナゴのようで、まだら色
赤い羽根が数枚あり、飛ぶ。そして、羽を振ると、サクサクと音をだす。尓雅翼
*4
では一名梭鶏、莎梭、音はよく似ている 正字通
*5
尓雅翼によると莎鶏は羽を振って、声を出す。その形は頭は小さく、羽は大きい。
青色と褐色とあり、種率
*6六月になると、羽を振って、声を出す。連夜サツサツと
やまない。その声は糸を紡いでいる音に似ている。その為、一名、梭鶏、今は俗に
人が言うには、これを、絡糸と。 思うに、今、俗に呼ばれる管巻また、名を
藪切という者はすなわちこのものか?クダマキとシバキリとは一
類で二種である。
六月莎鶏振羽
*7