千虫譜ウィキ - 原本A3-8


原本B

生物情報

翻刻

(右頁)
蚊ノ類 九月末釆る土中ニ生スル長
キ孑ゝ虫ノ如キ虫背ワレテ此虫出
飛形如此全形柔ニ〆トレハ脚モゲ
ヤスシ

シラウ䖟

シヨヤ

(左頁)
浮塵子 ウンカ 土州ニテカツボ
薩州 ヌカバイ 雲州肥前ニテセゝリ
簷下ニ群飛ス一上一下人ノ舂ツク状ノ如シ
或ハ旋飛テ磑状ニ似
タリ人以雨晴ヲ占
フ童語ニカツボ
ノモチツキト
云ヨク人ノ
耳目ニ入ル
城州淀
川邊曇
天ナレハ
此虫群飛ス
遠望烟霧ノ如シ
人行コレニアヘハ目鼻
口ニ入甚害ヲナスモノ
ナリ

シオウリ
此モノ蠅ヲトリ液ヲ吸取ル
モノナリ人ニ就テ害ヲナサズ

金剛鑚 一名没子 ブト本綱ノ蟆子ナリ形蜂ニ似テ一分
許黒ク光アリ昼■夜伏人ヲ嘬ハ痒腫数日瘡ヲナス毒虫ト云

書き下し

現代語訳

(右頁)
蚊の仲間 九月末とった土中に生じた長
いボウフラのような虫の、背が割れて、この虫が出てきた。
飛ぶ姿はこの形のようである。全身やわらかく、手に取ると脚はもげ 
やすい

シラウ䖟

シヨヤ

(左頁)
浮塵子 ウンカ 土州*1ではカツボ
薩州*2 ヌカバイ 雲州*3肥前*4ではセセリ
のき下に群れて飛ぶ。上がったり下がったり、人が臼をつく様子のようである。
あるいは、旋回するように飛んで、石臼を回すように見える時もある。
人はこれをもって、雨か晴れかを占う
童語にカツボ
ノモチツキという。
よく人の 
耳や目に入る。
城州*5
川のあたりが、曇
曇っているとおもったら、 天ナレハ
この虫が群れで飛んで、此虫群飛ス
遠くから見ると、煙のようだった。
人が入って、これにあうと、目鼻
口に入って、大変害をなすもの
である。

シオウリ
この虫はハエをとり、その体液を吸い取る
ものである。人について害をなしたりはしない。

金剛鑚 一名没子 ブト本綱*6の蟆子である。形は蜂ににて、一分許*7
黒くツヤがあり、昼は■*8夜は寝ている。人をくえば、痒みのある腫れを数日傷をつくる毒虫という。

備考