翻刻
古今秋歌六帖第六
まつむし
貫之 三首
秋の野のつゆにぬれつヽ誰くとか人まつむしのこゝらなくらん
こんといヽしほとやすきにし秋のに人まつむしのこゑのかなしき
秋の野にきやとる人もおもほへつたれをまつむしここらなくらん
夕されは人まつむしのなくなくへにひとりある身のこひまつりぬる
たきつせのなかに玉つむしらなみはなかるヽみすをおにやぬくらん
右□□かへし□にてよめり
五條のきさき
あきのヽに我まつむしのなくといはゝおらてねなから花をみてまし
これ次に□しのふ□に草にやつるヽといふうたあり
古今集□ことなる事なきによりて□し侍る
弘賢曰これ□まつむしをよめるうたのいとふるきをかくし都の外□□な人まつむ■
よめり忠岑ぬしの詞に月まつむしといひけるをあはせ考ふれはもとより□む
しといへる名にや有けん
源氏物語榊の巻
おおかたのあきのわかれもかなしきになみだなそへそ野辺のまつむし
弘賢曰これうた□こくろにはあらてよめるなり
夫木和歌集巻十四
住吉御社百種御歌 慈鎮和尚
すみよしの井かきのもとのむしの音にをの声にも松風のある
千五百番歌合 参議雅経卿
岩代の野へのしたくさくさふく風にむすほれたるまつむしのこえ
弘賢曰これらはみな□物の松に□そへたりこれにも右□の□華
をみるべきなり
すゝむしをよめるうた
古今和歌六帖第六
すゝむし
たまさかにかふあひみれはすゝむしはむつましなから
こへそきこゆる
人のいもかるときくまてをみなへしもと□になくすゝむし
のこへ
かりにきてのへにそまとふすゝむしの聲そさやけきしるへなれとも