千虫譜ウィキ - 原本A3-82


原本B

生物情報

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らをもあはせ考ふへし時世に古今のたかひあり土地万里の波涛をへたて
たれとも其頃喩の請合せしはおもしろきことなり
金琵琶秘伝花鏡云遂細定その名号曰油利撻𧒻殻青金琵琶紅紗青紗紺色□核形土蜂形者
      為一等云々 弘賢曰明の呉綺か蟋蟀賦に甚既闘也□(氵+厳)銕騎之相持余乃金号琵琶香
称獅子戴我頭来飽卿挙矣とみへたり金琵琶の名これにもとつけるにや
すゝむし促織の一種なり古今六帖のする所の歌の詞及忠峯ぬしの和歌の序
       に水の音にたへしによれはリン〱となく声を鈴の音に聞なして名
つけしにや但しこれは延喜の頃の名なり源氏物語のころよりは松風の音に聞
なして松虫と名をかへたる事上にみへたるかことししかれともそれは京都にてのこと
なり諸国は今にこれをすゝむしといふ大和本草云鈴虫はそのさま西瓜の種のごとく
黒く平たくして首さゝやかにひけなかは白く二條あり弘賢曰□黒きはリン〱となく
なりこれは古名にて中古以来の名にはたかへりすへて此二虫の事をいへるに時代の沿革
あるをしらすして黒きを鈴虫なりといふもあり又まつむしといふもあるはいつれもそ
の一端にて差別をしらぬ説なり或人曰或虫に松風のチンチロリンと吹へきやうなく鈴の音
のリンとのみは聞へかたしといひけるはいか□弘賢曰鈴といふ□神社にかけたる丸ろきのみに
はかきらしレイといひリンといふも皆鈴なるへし□■も風りんとといふもの即是なか
りなく□のリン〱ときこゆるゆへにもとよりよくかなつり□にもろこしもなく聲に鐘
の□□とて金鐘児となつけしをも思ひあはすへきなり又まつむしの名義むかし
は松風によりたりにはあらす此或虫の説は源氏物語以来の以□なり陸奥人曰□城野の鈴虫
他にこえて聲よし江戸へも献上あり其聲はリン〱となくなりチンチロリンとなくむ
しはたへてなしとは名にたてるみちおくにいひつたへし所を徴するにたれり
金鐘児■宏道促織志列侗促織志秘伝花鏡〇延宝八年の節用大全にすゝむし
      とよみたり表宏道曰類促織而韻致悠揚如金玉京師人謂之□□□刘侗曰黒色
鋭前豊後鬚尾皆岐躍飛以翼鳴其声磴稜ゝ名之曰□□□花鏡曰持って翼鼓鳴其声すなわち磴稜ゝ如小鐘
然更間以紡績冷虫慶長版節用集月鈴児延宝板節用
虫之声        弘賢曰かり字之      大全

この二虫考は弘賢編集せる古今要覧中の位置編なり栗
本氏虫類の写真をあつむる事年月をへてそのかす
いくももちにあまれるをこたひやことなきあたりにみそなは
す袖□たとてたてまつらるゝよしにかは□は此考を書
てそへ□□とこはるゝにいなみなんもへたてこゝろあるやう
なりかつ□弘賢かめいほくにもあるへきをとすゝめ
らるゝにそ或ハともし火のもとに固睡をしのき
ある□編集のひまをしのひくらつしをたゝ
文字の□も正しからて浄写の□にあらつるをおそ
るゝのみなり文化八とせ長月の七日源弘賢書
    松虫鈴虫の名の辨
物の名なとおほつかなきをしるてあなくりもとめんこそ
いとものくるをしけれ俊成卿のしの紫草いかなるものそ
ともつたゝその名のえんにやさしけれはち

書き下し

現代語訳

備考