だいたい蜂が蜜を醸すには百花の清潔で純粋なる津液
*1を用いて作りだした物である。
醸すのに、不潔の物を用いるという古説あるけれども、ひどいでたらめの説であると貝原翁
*2が
ぬれぎぬを訴える説があるので見るべきである。
だいたい蜜蜂は春の末分かれて飛んで一箇所にむらがって、玉のようになって人家の軒や木枝
にぶら下がっている事がある。これは親蜂について子蜂が分かれる所である。大概八十八夜
*3から
四五日の際夏至の頃までに分かれるものは、性質がいい。
秋に分かれる事もあるが、あまり性質はよくない。堂へ入れて飼っても
居つかないで、逃げてしまう事がある。夏の土用過ぎて分かれるものも時期はずれで益が無いというから、
まして、秋月分かれるものにおいては当然いうまでもない。
蜂を養うのに木で作った箱を堂
*4という。高さ一尺一寸横一尺二寸深さ
一尺四寸
*5という。これが定番である。開き蓋には小さな穴を開ける。
下の方に五つ並べてあけるべきである。下に一つ開きまた横に細長く五か所ほど、あかりとりの穴を開くといい。
その穴は黄大豆
*6くらいが、蜂の出入りが自由になってでちょうどいい。
穴が大きすぎると熊蜂
*7が入って蜜蜂を食い殺し、蜜を吸い取る。これがあると、集まった蜂は古巣を
捨て去る事がよくある。
蜂が分かれて群がって集まっているのを飼おうとするなら、箱または酒樽の内に蜜を塗り蜂を
ほうきで払いおとし入れて置けば、一夜で隅の所に巣を作る。
前に図に描いたのは桶である。寒くなったら菰
*8で外を包み、南を向いた暖かい所に置くのがよい。
前に図に
描いたのは桶である。寒くなったら菰コモで外を包み、南を受けて暖かい所に置くのがよい。
箱や桶の内に分かれた蜂を入れ終えたら、内にさらに蜜をいれ
箱の中におき、小穴までも残りなく杉の葉を外からさして塞ぐ。
二、三日も居てなじんだのを様子をみて杉の葉を取り去る。
越前
*9では