前ページより 雄)ばかり得るのはむずかしい。雌雄共に用いるべきだ。その新鮮なのを選ぶべきである。およそ蚕の雌は
最初から卵を腹に一杯なので、交尾を待ってば、よく卵を産み、その卵もよく生育する。
○蚕沙 和名抄にコクソと言われている。原蚕沙はナツゴのコクソである。古今医統
*2に、馬鳴
肝という。程齋医抄撮要
*3では夏金沙の名があり、本草彙言
*4には、蚕沙は即ち、
蚕の糞で、晩蚕が良いという。本経逢原
*5に「翻訳中〜
〜」
ここに私は用いる変わった方法が覚えがある。ここに挙げる。蚕沙の性質はよく吸い寄せる効能がある。
たいてい眼に物が入った時は水で堅めたものを細かい粉末にして練り、細長くほうれい綿
*6につけて眼にはさむ
とよい。この時に入った物はすぐに出る。また、昔入ったチリやホコリであっても吸い出すのは、すばらしい。
私は過去に鹿角を焼いて石臼でついて粉にしていた時、眼に入ったことがある。
三角でソバの実程のおおきさで、痛くて耐えられない程だった。
此物を新しく粉にして練り、綿につけて眼にはさむと
しばらくして、尖った角が躍り出た。たちどころにに痛みが治まった。
子供の鵞口瘡
*7に食塩を少しばかり入れこの粉末を
ぬりすりつけておけば、口の熱がなくなり、だんだん白い物
剥がれ去る。本草附方
*8に子供の口のできものを
治すとある。
五倍子。五去風の別名。
回春*9小血竭
百一選方*10薬用にするのに、文蛤という。これはヌルデの木につく虫の巣である。
ヌルデの木の実のように見える。けれども実とは別である。実は塩麩子という。
*11本綱味果類の部分に、この事が書かれている。
五倍子、和名フシは古い歌ではミミフシという。生で木からとったままのものをキブシという。
フシの木の中国の名、膚木の葉はウルシの葉に似て大きく粗いノコギリのようなふちがある。
秋が深まると、紅葉が美しい。ヌルデモミジという。この木は山野にとても多い。
山の中に生える膚木に
原蚕作る繭は円形で柔らかく、ハルゴの固く小さく
くびれがあるのと異なる。
その卵となると、四、五匹が一繭にはいったりして、醜い。
また、八匹の蚕が一つの繭に入る事を甲州
*12方言で八人枕という。