ヌルデにかぎって、このものができる。その着く所には特に定まった場所はない。ある物は木の枝にあり、ある物は茎や葉にある。
みな筋があって、下に垂れる様子は実が実っているようである。その形は一定でなく、大小長短ヒシ
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の殻ようだったり三、五またに分かれている物もある。
その色は紅色で
*3、乾くと褐色に変わる。内には空間があって、米ヌカのような白い粉がたくさんある。
これがその虫である。その為長くたくわえるには、蒸す事である。
完全な物を採って粉にし、女性の歯を染めるのに使うフシノコまたは、キブシの粉はこれである。
百薬煎、和名アセンヤク、薬屋では阿煎薬と書いて出回っているのは、この五倍子から作る物である。
舶来の物が、数品ある。今、難波
*4の商人がこれを作ってあちこちに売る。
勢州
*5朝熊ノ萬金丹
*6東都
*7ノ錦袋円
*8等はみな、この百薬煎をたくさん加えて丸薬にするもので、
その利益は大きい。相州
*9小田原
透頂香にもこれが入っている。様々な病気に用いる。
様々な州に広まる薬である。その使い方は遵生八牋
*10に出ている
萬病解毒丸または薩州
*11消毒丸等に文蛤がある。皆この五倍子である。川文蛤と使い方の書にあるのは、
皆これである。だいたい毒消しと世間がいう大粒の丸薬や、様々な家の秘方という、きつけ丸薬には、
残らずこの物がはいっていないものはない。使い方はとても広いものである。