栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい

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*生物情報
イボタノキ イボタロウカイガラムシ
*翻刻
虫白蝋 和名イボタロウ是イボタト云木二ツク虫ノ巣ヲ煎シテ取ル処ノ
蝋ナレバナリ奥ノ会津だいたい福島ヨリ多ク出ス因テ会津ラウトモ云イボタハ水蝋
樹ナリ灌木ニテ女貞ニ似タリ田野道傍ノ境ノ短墻ニ用ユ其山中ニ生
スル者ハ樹皮ニ白粉多ク厚ク纏ヒ綿ノ如く色白シ是其虫ノ巣ニシテ爪
ニテ揉ハ柔ニヘゲテ取レルモノナリ遠ク望メハ樹皮へ雪ノ積タルカ如シ俗
ニイボタノ花ト云不然花ハ別ニアリ朶梢小穂ヲ出シ四辨ノ小白花&ruby(アツ){攅}
&ruby(マリ){簇}生ス夏月ニ開キ腐木ノ臭気アリ又別ニ虫ノ多ク着テ其葉ヲ
食フモノヲ見ズ只此巣バカリミルモノナリ備後ニテ山オシロ
イ阿州ニテトバシリ播州ニテトスベリト云此虫粉ヲトリ戸障
子ノキシミテ走リ難ニヌレバ閾ヨクコレガ為に光滑ニシテ戸ヨリ動
キ走ル因テ此方言アリ又疣目ヲトルニ用ユ疣ノ根ヲ緊ク
結ヒ置キ此蝋一滴熱ニ乗シテ滴下スレハ疣目ヌケ去ル因テイ
ボタノ名アリイボトリノツマリタルナリ此虫巣ヲ採集タル
ヲ蝋滓ト云布袋へ入レ煎シ漉シ冷水中ニ投シテ蝋トス再
煎シテ磁罐中ヘコシ入レ布ニテ漉ハ色潔白ニシテ光アリ甚
堅シ擘開キコレヲ破レハ&ruby(ノギスジ){刷糸}紋ヲナスコレヲ虫白蝋ト云又虫
蝋ト称シテ漆蝋木蝋ト分別ス元来瘍科ニ用テ膏薬トナ
スハ皆此蝋ヲ用ユベキモノナリ今多ク漆蝋ヲ用テ膏
薬ヲ製スルハ宜シカラス新シキハカブレルモノナリ唐山ニテ
ハ女貞樹ニ此虫ヲ養フ故ニ一名蝋樹ト云朱ヲ加ヘ練
リテ假珊瑚珠トナスモノ也

*書き下し

*現代語訳
虫白蝋 和名イボタロウ。これはイボタという木につく虫の巣を熱して取る
蝋だからだ。奥の会津((およそ今の福島あたり))から多く取れる。なので会津ロウともいう。イボタは水蝋
樹である。背の低い灌木であり女貞((ネズミモチという樹木))に似て、田や野原の道端の境に短墻((低い垣根))に用いる。その山の中に生
える物は樹皮に白い粉を多く厚くまとい、綿のように色が白い。これはその虫の巣であって、爪
でもめば、やわかくはげて取れるものである。遠くから見ると樹皮に雪が積もっているように見える。俗
にイボタの花というがそうではない。花は別にある。たれた梢に小さい穂を出し、四枚の花びらを持つ小さな
白い花があつまり生ずる。夏の月に開き腐った木の臭いがある。また別に虫が多く着いてその葉を
食うものは見ない。ただ巣ばかり見える。備後((だいたい広島))では山オシロ
イ阿州((阿波の国。だいたい徳島))ではトバシリ、播州((播磨。大体兵庫))ではトスベリトいう。この虫の粉をとり戸障
子のきしんで、動きにくい時つかえば、勢いがよく、これが光と滑らかさを引き起こし、戸が動き
走るので、この方言がある。又イボをとるのに用いる。疣の根をきつく
縛っておいて、この蝋を一滴、熱してたらせば、イボがとれる。その為イ
ボタの名がある。イボトリが縮まったものである。この虫の巣を集めた
のを蝋滓という。袋へ入れて熱して漉し、冷水の中に入れると、蝋になる。再び
熱して磁器の入れ物に漉しいれて布で漉せば、真っ白で光沢があり、とても
堅い。割き開き、これを割ると&ruby(ノギスジ){刷糸}紋((?))が見える。これを虫白蝋という。また虫
蝋と称して、漆蝋、木蝋と区別する。元来できものに用いて、膏薬と
するのは、皆、この蝋を用いるべきものだ。今は多くある、漆蝋を用いて膏
薬を作るのはよくない。新しいのはかぶれるものである。((B本記述無))唐山((中国))で
は女貞樹((ネズミモチ?))でこの虫を飼育する。故に、蝋樹という。朱色を加えて練り
にせ珊瑚球とするものである。
*備考
「最近よくあるイボ等のできものにつける軟膏にウルシからとった蝋を
つかうのはよくない。新しい物はかぶれる。」等の記述は、A本にのみある。

なお、ここに紹介される方法で、本当にイボがとれるかどうかは不明。
イボタ蝋にイボトリの効果が本当にあるかどうかは
未確認である。

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