栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい

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*原本A
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*生物情報
カイコ
*翻刻
息スル事ナシ後に厚クナレハミヘズナリ甚辛苦シテ休トミユ此其性ノ自然也繭ニ数品アリ緊
小ニシテクヒレメアルハ雄ナリ丸キ形ハ雌ナリ故ニ唐山ニモ雄繭尖細緊小ト云円慢厚而腰大者雌也
トアリ一蚕一繭ヲ造ルモノ形狭ク性ヨク糸強シ和名抄ニヒキマユト訓ス今俗に小マユト呼フモノ也
此繭ヲ用テ白羽重紗綾縮緬等ヲ織ルニ此糸ヲ用ユ潔白ニシテ光リ多ク上品ナリ天工開物ニ
凡取糸必用円正独蚕繭則緒不乱ト云ヘリ又二蚕或ハ四五蚕共ニ一繭ヲ造ルモノ
ハ形濶ク大ナリ飛州ニテフトマユ甲州ニテ八人枕ト云此糸弱クシテ光リ少シ下品トス故ニ多
ハ綿トスコレヲ唐山ニテ同宮繭と云事物紺珠ニ見ヘタリ繭マユ事物紺珠ニ蚕衣ト云
名アリ正字通ニ蠒即繭ノ俗字又省書シテ□(尔の下に虫)ノ字ヲ用ユル事アリ繭ト同シ略字ト思ヘ
シ凡繭烈日三日許曝乾シテ後糸ニヒクコレニハ蚕ノ啖残セル桑葉ヲ貯へ置テ火にタキ灰
トナシアクニタレテ鐺中ニ沸シテ繭を入レ糸ヲヒクニ緒不乱二百個ノ繭ニテ尽ク一
條ノ糸トナリ出ルモノ也神奇不測ノ妙ト云へシ日ニ曝スハ中ノ&ruby(ヒル){蛹}ヲ殺サンカタメ也不然ハ繭ヲ
破リ羽化シ出レハ其繭糸截断シテ糸にナリ難シ故ニ皆綿ニ製スコレヲ俗ニワタマユト云
東医宝鏡宝鏡既綿繭ノ名アリ又空蚕繭蛾口繭繭空等ノ名アリ繭中ニ居ルモノ𧏡蜟ノ状ニ似赤褐
色ナリ蛹ト云俗ニヒルト云四国ニテムツゴト云是ナリ面目ノ形アリ糸ヲヒクトキ鐺中ニ残ルモノヲ
ヲホソキ竹串ニ貫キ焙リ香フシテ小児ニ飼ハシムレバ五疳虫気ヲ治蜂子ヲ啖フカ如ク香ク甘味ア
リサナギトモイフ 種ヲトルニハ日ニ曝ザル処ノ繭ヲ
器中ニ入レ其上に藜葉ヲトキハ不日ニ
蛹羽化シテ出但繭ノ一頭ヲ破リ穿ツコレ蚕
蛾ト云ヲコノテフ也
和名抄ニヒヽルト云今土州ニテヒイルト云古キ
和訓ナリ阿州ニテヒウリ東国ニテヒルト云テフ
ト云燈蛾ニ似テ淡褐色雄ハ体痩小ニシテ紙
上ニ飛走ス雌は体肥大ニシテ紙上ニ伏シテ動
カス只翼ヲ動スノミ雄其雌ノ傍ニ至レハ
直ニ尾ヲ合セテ会媾ス今繭ヨリ始テ出
ルモノモ雌アレハ立処ニ交合ス因テ本邦ニ
婚禮ノ式ニメテフ・オテフ熨斗包折形ノ口傳アリ
半時ホトニシテ離ストキハ赤キ宿水ヲ下シ種

(挿絵上)
其薬用ニシテ上品ナル
モノ直強ニシテ至堅硬
折之内透明ニシテ琥珀
ノ如シ仙台地方民俗
コレヲヲシヤリコト云
其皮上白粉ヲ塗カ
如シ故ニ白殭蚕ト云
*書き下し

*現代語訳
(前ページから――休む)事が無い。後に繭が厚くなればカイコは見えなくなる。とても苦労したので
休むようにみえる。これはその自然の性質である。繭には数品ある。
固く小さくくびれ目があるのは、雄で、丸い形は雌である。故に中国でも
雄の繭は実が細く堅く小さく、丸く厚く腰が太い物は雌であるとあるという。
和名抄((和名類聚抄))にヒキマユと読み、今俗に小繭と呼ぶものである。この繭を用いて羽白重((白羽二重?生地の種類))
紗綾、縮緬((いずれも生地の種類))を織るのに、この糸を使う。潔白でツヤが多く、上級品である。
天工開物((明末(17世紀)に宋応星によって書かれた産業技術書))に糸は必ず一匹の蚕入った繭を使う。
すると、糸の初めが乱れないといわれている。また、二匹の蚕或いは四、五匹の蚕が一緒に繭を作る物は大きい
飛州(( およそ今の岐阜の北部。飛騨地方))ではフトマユ、甲州((およそ今の山梨))では八人枕という。
この糸は弱くツヤも少ないので下級品とする。なので、多くは綿にする。中国では同宮繭
というと事物紺珠((1604年明の黄一正編))に書いてある。事物紺珠に繭の事を蚕衣名があり、
正字通((明末の張自烈によって編集された漢字辞典))に蠒という字は繭の俗字又は省略した物で、
(尔の下に虫)の字を使う事もあるが、略字だろう。繭は夏の照り返しの激しい日に三日ほど曝して、
乾燥させてから糸にひく。これには、蚕が食べ残した桑の葉をためておいて、
火で焼き灰にして、アクニタレテ((?))鐺((三脚つきの鍋か?))の中に
沸かして繭を入れて糸をひくと、緒が乱れず、二百個の繭を煮てもことごとく一つの
糸となって、出てくるのは、不思議で計り知れない。日に晒すのは、中の蛹を殺す
為で、こうしないと、繭を破って蚕が羽化し出てしまうので、その繭の糸が切れて糸になりにくい。
なので、皆綿にする。これを俗にワタマユという。東医宝鏡((1613年に刊行された李氏朝鮮時代の医書。許浚著。))に綿繭の名がある。
空蚕繭、蛾口繭、繭空等の名前がある。繭の中にいるものは、𧏡蜟((A本ニシャドッチの訓あり。一部の鱗翅目の蛹の一形態。触るとそれらしい方向を指すので、「西はどっち?」からニシャドッチに訛ったと言われている))の状に似て
赤褐色である。蛹という。俗にヒルともいう。
四国ではムツゴという。両目の形がある。糸をひく時、繭を煮る鍋の中に残る物を
細い竹串にさして香ばしくあぶり、子供に食べさせると五疳虫(())
気を治す。蜂の子に似て、香ばしく、甘みがある。サナギともいう。
種((卵))をとるには日に晒さなかった繭を器の中に入れて、藜葉((ヒユ科アカザ属アカザ))をおいておけば
あまり日数を経ない内に蛹は羽化してでてくる。但し、繭の片方の頭を破り穴を開ける。これを蚕蛾という。
ヲコの蝶である。和名抄((和名類聚抄))ではヒヒルという。土佐((およそ今の高知県))ではヒイルという。古い和の読み方である。
阿波((およそ今の徳島県))ではヒウリ東国((関東))にてヒルという。
蝶という燈蛾((夜行性の蝶の仲間を指すか))に似て淡褐色オスは体が痩せ小さく紙の上を飛び回る。
メスの体は肥大していて、紙の上を動かない。ただ羽を動かすだけである。オスはメスの側にくればすぐに尾を
あわせて交尾する。すぐに繭から出てたちどころに交尾する事から、本国には
婚礼の式に熨斗をオチョウ、メチョウの形に折りつつむ口伝がある。半時ほどして離すと、赤い宿水((雌カイコの尿))を出し、
種(紙の上におけば――次ページへ続く

*備考

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