栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい



生物情報

ヌルデ ヌルデシロアブラムシ

翻刻

右頁 膚木 五倍子

五倍子一名五去風同春小血竭百一選方薬用ニスルニ文蛤ト云是ヌルデノ木ニ生ズル虫ノ巣ナ
リヌルデノ木ノ実如シ去ナガラ実トハ別ナリ実ハ塩麩子也本綱味果類ニ本條アリ五倍子和
名フシ古歌ニミヽフシト云生ニテ木ヨリ採リタルマヽノモノキブシト云フシノ木漢名膚木葉ハ漆葉ニ
似テ大ニ粗キ鋸葉アリ秋深シテ紅葉美ナリヌルデモミヂト云此木山野ニ極テ多シ山中ニ産ス
膚木ヌルデニ際リ此物ヲ生ス其着処定所ナシ或ハ樹枝ニアリ或ハ茎及葉ニアリ皆小帯アリテ
下垂スル事実ノ生タルガ如シ其形一ナラズ大小長短菱殻ノ如く或ハ三五岐ヲ分ツモノアリ
其色乾ケバ褐ニ変ズ内空虚ニシテ米粃コヌカノ如キ白キ粉多クアリ是其虫ナリ故ニ久ク貯フル
モノハ薫過スモノナリ全キモノ採リ末トナシ婦人歯ヲ染ルノ用ニ供スル処ノフシノコ或ハハキブ
シノ粉是ナリ百薬煎和名アセンヤク薬舗阿煎薬ト書テ通用ス此モノ五倍子ニテ製スルモ
ノナリ舶来数品アリ今速浪商人コレヲ製シテ四方ヘ售ル勢州朝熊ノ萬金丹東都ノ錦
袋円等皆此百薬煎ヲ大ニ加へ丸製トスルモノニシテ其利益多シ相州小田原透頂香ウイラウニモ
此モノ入ル諸病ニ用ユ諸州ニ弘マル薬ナリ其方ハ遵生八牋ニ出ツ萬病解毒丸
及薩州消毒丸等に文蛤アリ皆此五倍子ナリ川文蛤ト方書ニアルハ皆此モノナリ
凡そ毒ケシト俗間称スル処ノ大粒ノ丸剤諸家秘方トスル処ノキツケ丸剤ニハ
尽ク此モノヽ入ザルモノナシ用処広大ナルモノナリ

書き下し

現代語訳

右頁 膚木 五倍子

五倍子。五去風の別名回春*1小血竭百一選方*2薬用にするのに、文蛤という。
これはヌルデの木につく虫の巣である。
ヌルデの木の実のように見える。けれども実とは別である。実は塩麩子という。本綱 *3味果類の部分に、この事が書かれている。
五倍子、和名フシは古い歌ではミミフシという。生で木からとったままのものをキブシという。
フシの木の中国の名、膚木の葉はウルシの葉に似て大きく粗いノコギリのようなふちがある。
秋が深まると、紅葉が美しい。ヌルデモミジという。この木は山野にとても多い。山の中に
生えるヌルデにかぎって、このものができる。その着く所には特に定まった場所はない。
ある物は木の枝にあり、ある物は茎や葉にある。みな筋があって、
下に垂れる様子は実が実っているようである。その形は一定でなく、大小長短ヒシ*4の殻ようだったり
三、五またに分かれている物もある。
その色は、乾くと褐色に変わる。内には空間があって、米ヌカのような白い粉がたくさんある。これがその虫である。
その為長くたくわえるには、蒸すことである。完全な物を採って粉にし、女性の歯を染めるのに
使うフシノコまたは、キブシの粉はこれである。
百薬煎、和名アセンヤク、薬屋では阿煎薬と書いて出回っているのは、この五倍子から作る
物である。舶来の物が、数品ある。今、難波*5の商人がこれを作ってあちこちに売る。
勢州*6朝熊ノ萬金丹*7東都*8ノ錦袋円*9等はみな、この百薬煎をたくさん加えて丸薬にするもので、 
その利益は大きい。相州*10小田原透頂香ウイラウにも
これが入っている。様々な病気に用いる。様々な州に広まる薬である。その使い方は遵生八牋*11に出ている
萬病解毒丸または薩州*12消毒丸等に文蛤がある。皆この五倍子である。川文蛤と使い方の書にあるのは、皆これである。
だいたい毒消しと世間がいう大粒の丸薬や、様々な家の秘方という、きつけ丸薬には、
残らずこの物がはいっていないものはない。使い方はとても広いものである。

備考

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