最終更新: karasu_miyako 2024年04月18日(木) 19:23:54履歴
棚ヘ上ゲテ祝ウ事アリ故ニ薬舗ニテ多ク得ル事ナリ難シ故ニ姦商別ニ此物ヲ造作セン
カ為ニ最初ヨリ蚕ヲ飼フモノアリ此蚕繭ヲ作ントスルマへ惣身黄金色ニ
ナリ咽頭透明ニナリタルヲ候テ炒鍋ニ入テ炒殺シ石灰ヲマブセテ日乾ス
ト云薬肆多クハ此偽造ノ白殭蚕ニテ利ヲ得ルト云白キハ自然ニ白ク黴
タル如くコレヲ折レハ堅硬透明琥珀ノ如クナルヲ真物トスベシ其白ニ過
テ粉ヲ撲カ如ク折レハ内ニ蚕沙ヲ含ミ黒色ナルハ極テ堅硬ナラズコレ真
物ニ非ト知ルベシ本草彙言ニ蚕病風死其體直殭其色自白死且
不朽也今市肆多用中湿死蚕或用石灰末淹拌令白服之為害
最深不可不慎也ト云ヘリ又天工開物ニ若風則偏忌西南西南風大
𠡍則有合箔皆殭者ト云本経逢原ニ入薬惟直者為雄去黒口及
糸炒用トアリ ○烏爛蚕江州ニテタリコト呼黒ク腐リタルヲ云コレ
ヲ白殭蚕ニ雑入スル事宜ク撰ヒ去ルベシ○蚕蛻カイヒコノキヌ是蚕ノ
眠ル毎ニ蛻去処ノ旧皮ナリ佛退或馬明退等ノ名アリ唐山ニテ薬
用ニス和方用ユル事ナシ○原蚕 和名ナツゴナリ一名晩蚕魏蚕夏蚕熱
蚕等ノ名アリ正字通ニ蝩ト名ク六月中旬ノ頃春蚕 ノウミ付ケタル種子
初ハ色白ク形円ニ頭ニ微尖アリ三日許ヲ経テ色黄ニ変シテ形扁凹トナル
又四日許ヲ歴テ其色浅黒微紫ニ変ズ又日ヲ歴テ頭尖リ黒色ニ変シ漸ク
全ク黒色トナリ一日ヲ歴テ卵ヲ穿テ䖢出ルコレヨリ漸ク成長シ眠起スル事四
度過テ繭ヲナシ蛾ニ化スル事春蚕ト同シ只其日数早シ薬用ニ蛾ト沙トヲ
用ユ江戸ニテハ二度ガヘリヲコト云時珍云按ニ鄭玄注周礼云原ハ再也謂
再養ノ者ナリト云宗奭曰原者有原復敏速之義頌曰原蚕東南州郡多養
之此是重養者俗呼為晩蚕北人不甚養之ト云ヘリ予嘗テ此物ヲ養フ事ア
リ其蚕ギヤウギアシク箔上ニノミ在ル事ナシ屋角ナドニハイ上リ蔟ヲアテガウ
ヲ待タズ障子戸角等ニハヒテ繭ヲ作ル事二蚕一繭ニ入リ三四蚕一繭
ニ入ル其マユ柔ニシテ薄ク扁ナリ其性アシヽ強キ糸ニハナラズ皆綿ニ作ルト𧈧
トモ性弱シ烏犀圓方中晩蚕蛾アリ一粒金丹ニモ入ル其早ク再ヒカヘル
事ヲ其功ニトレルナリ雄ナル蛾ヲ撰テ薬用ニストアレ共雄者許リ得ガタシ
雌雄共ニ用ユベキナリ其新鮮ナルモノヲ撰フベシ凡蚕蛾雌ナルモノハ
最初ヨリ種子腹ニ満ツ其交合ヲ待テ能ク産シ其種子能ク生育ス○蚕
沙和名抄ニコクソト称ス原蚕沙ハナツゴノコクソナリ古今医統ニ一名馬鳴
肝ト云程齋医抄撮要ニ夏金沙ノ名アリ本草彙言ニ蚕沙ハ即
蚕糞也以晩蚕者良ト云本経逢原ニ微炒用惟晩者為良早蚕者
不堪入薬以飼火烘故ニ有毒也
コヽニ予用ヲボヘ奇方アリコヽニ挙ク蚕
カ為ニ最初ヨリ蚕ヲ飼フモノアリ此蚕繭ヲ作ントスルマへ惣身黄金色ニ
ナリ咽頭透明ニナリタルヲ候テ炒鍋ニ入テ炒殺シ石灰ヲマブセテ日乾ス
ト云薬肆多クハ此偽造ノ白殭蚕ニテ利ヲ得ルト云白キハ自然ニ白ク黴
タル如くコレヲ折レハ堅硬透明琥珀ノ如クナルヲ真物トスベシ其白ニ過
テ粉ヲ撲カ如ク折レハ内ニ蚕沙ヲ含ミ黒色ナルハ極テ堅硬ナラズコレ真
物ニ非ト知ルベシ本草彙言ニ蚕病風死其體直殭其色自白死且
不朽也今市肆多用中湿死蚕或用石灰末淹拌令白服之為害
最深不可不慎也ト云ヘリ又天工開物ニ若風則偏忌西南西南風大
𠡍則有合箔皆殭者ト云本経逢原ニ入薬惟直者為雄去黒口及
糸炒用トアリ ○烏爛蚕江州ニテタリコト呼黒ク腐リタルヲ云コレ
ヲ白殭蚕ニ雑入スル事宜ク撰ヒ去ルベシ○蚕蛻カイヒコノキヌ是蚕ノ
眠ル毎ニ蛻去処ノ旧皮ナリ佛退或馬明退等ノ名アリ唐山ニテ薬
用ニス和方用ユル事ナシ○原蚕 和名ナツゴナリ一名晩蚕魏蚕夏蚕熱
蚕等ノ名アリ正字通ニ蝩ト名ク六月中旬ノ頃
初ハ色白ク形円ニ頭ニ微尖アリ三日許ヲ経テ色黄ニ変シテ形扁凹トナル
又四日許ヲ歴テ其色浅黒微紫ニ変ズ又日ヲ歴テ頭尖リ黒色ニ変シ漸ク
全ク黒色トナリ一日ヲ歴テ卵ヲ穿テ䖢出ルコレヨリ漸ク成長シ眠起スル事四
度過テ繭ヲナシ蛾ニ化スル事春蚕ト同シ只其日数早シ薬用ニ蛾ト沙トヲ
用ユ江戸ニテハ二度ガヘリヲコト云時珍云按ニ鄭玄注周礼云原ハ再也謂
再養ノ者ナリト云宗奭曰原者有原復敏速之義頌曰原蚕東南州郡多養
之此是重養者俗呼為晩蚕北人不甚養之ト云ヘリ予嘗テ此物ヲ養フ事ア
リ其蚕ギヤウギアシク箔上ニノミ在ル事ナシ屋角ナドニハイ上リ蔟ヲアテガウ
ヲ待タズ障子戸角等ニハヒテ繭ヲ作ル事二蚕一繭ニ入リ三四蚕一繭
ニ入ル其マユ柔ニシテ薄ク扁ナリ其性アシヽ強キ糸ニハナラズ皆綿ニ作ルト𧈧
トモ性弱シ烏犀圓方中晩蚕蛾アリ一粒金丹ニモ入ル其早ク再ヒカヘル
事ヲ其功ニトレルナリ雄ナル蛾ヲ撰テ薬用ニストアレ共雄者許リ得ガタシ
雌雄共ニ用ユベキナリ其新鮮ナルモノヲ撰フベシ凡蚕蛾雌ナルモノハ
最初ヨリ種子腹ニ満ツ其交合ヲ待テ能ク産シ其種子能ク生育ス○蚕
沙和名抄ニコクソト称ス原蚕沙ハナツゴノコクソナリ古今医統ニ一名馬鳴
肝ト云程齋医抄撮要ニ夏金沙ノ名アリ本草彙言ニ蚕沙ハ即
蚕糞也以晩蚕者良ト云本経逢原ニ微炒用惟晩者為良早蚕者
不堪入薬以飼火烘故ニ有毒也
コヽニ予用ヲボヘ奇方アリコヽニ挙ク蚕
本草彙言
蚕病風死其體直殭其色自白死且
不朽也今市肆多用中湿死蚕或用石灰末淹拌令白服之為害
最深不可不慎也
天工開物
若風則偏忌西南西南風大𠡍則有合箔皆殭者
本経逢原
入薬惟直者為雄去黒口及糸炒用
宗奭
曰原者有原復敏速之義頌曰原蚕東南州郡多養之此是重養者俗呼為晩蚕北人不甚養之
本草彙言
即蚕糞也以晩蚕者良
本経逢原
微妙用惟晩者為良早蚕者不堪入薬以飼火烘故ニ有毒也
蚕病風死其體直殭其色自白死且
不朽也今市肆多用中湿死蚕或用石灰末淹拌令白服之為害
最深不可不慎也
天工開物
若風則偏忌西南西南風大𠡍則有合箔皆殭者
本経逢原
入薬惟直者為雄去黒口及糸炒用
宗奭
曰原者有原復敏速之義頌曰原蚕東南州郡多養之此是重養者俗呼為晩蚕北人不甚養之
本草彙言
即蚕糞也以晩蚕者良
本経逢原
微妙用惟晩者為良早蚕者不堪入薬以飼火烘故ニ有毒也
棚へ上げて祝う事がある。なので、薬屋でたくさん得る事はむずかしい。だからずる賢い商人は別にこのものを作る
為に最初から蚕を飼う者もいる。この蚕が繭を作ろうとする前、全身が金色に
なり喉も透明になったら、専用の鍋で炒って殺して石灰をまぶして日光で乾かす
という。薬師の多くはこの偽造の白殭蚕で利益を得るという。白いのは自然に白く黴
た様で、折れば、堅く透明で琥珀の様な物を本物とする。その白が白すぎ
て粉をまぶした様で折れば内に蚕沙*1を含んで黒色なのは全く堅くならず、これは
本物ではない。本草彙言に「※翻訳中〜
〜
〜」といっている。また、天工開物にも「※翻訳中〜
〜
〜」とある。○烏爛蚕 近州*2にて、タリコと呼ぶ。黒く腐ったのをいう。これ
が白殭蚕にまざる事があるので、よく選び取り去ること。○蚕蛻 カイコノキヌという。これは、蚕の
眠る度に脱皮する古い皮である。佛退、或いは馬明退などの名がある。中国では
使うが、日本では用いる事はない。○原蚕 和名ナツゴである。晩蚕、魏蚕、夏蚕、
熱蚕などの名がある。正字通*3に蝩と名がついている。六月中旬の頃春蚕 の産み付けた卵は
初めは白く形は円で、頭にかすかな突起がある。三日程たつと、色が黄色に変わって形が平らになりへこむ。
また四日ほどたつと色は浅黒く、かすかに紫に変わる。さらに日をへて、頭が尖り黒く変わり、ようやく
真っ黒となって、一日を経て、卵を破って小さい幼虫がでてくる。これから、ようやく成長し、四度眠起して
繭を作り蛾になるのは春蚕と同じである。ただその日数が早い。薬用に蛾と沙(糞)とを
用いる。江戸では「二度がえりヲコ」という。時珍*4がいうには、
ニ鄭玄注周礼*5いう原は再であり所謂
再養のものであるという。宗奭*6いわく、「翻訳中〜
〜」といっている。
私はかつて、これを飼う事があったが
その蚕はぎょうぎが悪く、箔の上にのみいる事がなく、屋根の角などにはいのぼり、まぶしをあてがう
のを待たず、障子戸の角などにはって繭を作り、二匹の蚕が一つの繭に入り、三四匹の蚕が一つの繭に
入る。その繭は柔らかく、薄く、平べったかった。其の性質は悪かった。強い糸にはならず、
皆綿にしたけれども、性質が弱い。烏犀圓*7の作り方の中に、晩蚕蛾がある。一粒金丹*8にも入る。
その早く再びかえる事をその効果にとりいれている。
雄の蛾を選んで薬用にするとあるけれども、雄ばかりは得るのがむずかしい。
雌雄共に用いるべきだ。その新鮮なのを選ぶべきである。およそ蚕の雌は
最初から卵を腹に一杯なので、交尾を待ってば、よく卵を産み、その卵もよく生育する。○蚕
沙 和名抄にコクソと言われている。原蚕沙はナツゴのコクソである。古今医統*9に、馬鳴
肝という。程齋医抄撮要*10では夏金沙の名があり、本草彙言*11には、蚕沙は即ち、
蚕の糞で、晩蚕は良いという。本経逢原*12に「翻訳中〜
〜」
ここに私は用いる変わった方法が覚えがある。ここに挙げる。蚕(沙の――次ページに続く
為に最初から蚕を飼う者もいる。この蚕が繭を作ろうとする前、全身が金色に
なり喉も透明になったら、専用の鍋で炒って殺して石灰をまぶして日光で乾かす
という。薬師の多くはこの偽造の白殭蚕で利益を得るという。白いのは自然に白く黴
た様で、折れば、堅く透明で琥珀の様な物を本物とする。その白が白すぎ
て粉をまぶした様で折れば内に蚕沙*1を含んで黒色なのは全く堅くならず、これは
本物ではない。本草彙言に「※翻訳中〜
〜
〜」といっている。また、天工開物にも「※翻訳中〜
〜
〜」とある。○烏爛蚕 近州*2にて、タリコと呼ぶ。黒く腐ったのをいう。これ
が白殭蚕にまざる事があるので、よく選び取り去ること。○蚕蛻 カイコノキヌという。これは、蚕の
眠る度に脱皮する古い皮である。佛退、或いは馬明退などの名がある。中国では
使うが、日本では用いる事はない。○原蚕 和名ナツゴである。晩蚕、魏蚕、夏蚕、
熱蚕などの名がある。正字通*3に蝩と名がついている。六月中旬の頃
初めは白く形は円で、頭にかすかな突起がある。三日程たつと、色が黄色に変わって形が平らになりへこむ。
また四日ほどたつと色は浅黒く、かすかに紫に変わる。さらに日をへて、頭が尖り黒く変わり、ようやく
真っ黒となって、一日を経て、卵を破って小さい幼虫がでてくる。これから、ようやく成長し、四度眠起して
繭を作り蛾になるのは春蚕と同じである。ただその日数が早い。薬用に蛾と沙(糞)とを
用いる。江戸では「二度がえりヲコ」という。時珍*4がいうには、
ニ鄭玄注周礼*5いう原は再であり所謂
再養のものであるという。宗奭*6いわく、「翻訳中〜
〜」といっている。
私はかつて、これを飼う事があったが
その蚕はぎょうぎが悪く、箔の上にのみいる事がなく、屋根の角などにはいのぼり、まぶしをあてがう
のを待たず、障子戸の角などにはって繭を作り、二匹の蚕が一つの繭に入り、三四匹の蚕が一つの繭に
入る。その繭は柔らかく、薄く、平べったかった。其の性質は悪かった。強い糸にはならず、
皆綿にしたけれども、性質が弱い。烏犀圓*7の作り方の中に、晩蚕蛾がある。一粒金丹*8にも入る。
その早く再びかえる事をその効果にとりいれている。
雄の蛾を選んで薬用にするとあるけれども、雄ばかりは得るのがむずかしい。
雌雄共に用いるべきだ。その新鮮なのを選ぶべきである。およそ蚕の雌は
最初から卵を腹に一杯なので、交尾を待ってば、よく卵を産み、その卵もよく生育する。○蚕
沙 和名抄にコクソと言われている。原蚕沙はナツゴのコクソである。古今医統*9に、馬鳴
肝という。程齋医抄撮要*10では夏金沙の名があり、本草彙言*11には、蚕沙は即ち、
蚕の糞で、晩蚕は良いという。本経逢原*12に「翻訳中〜
〜」
ここに私は用いる変わった方法が覚えがある。ここに挙げる。蚕(沙の――次ページに続く
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