最終更新: karasu_miyako 2024年04月11日(木) 20:27:05履歴
テ醸成スル事山蜜ニ異ナル事ナシ然レドモ家蜜ハ年々ニコレヲ採リ又ハ花
蘂も深山ノモノト異ナル故ニヤ其蜜薄ク山蜜ノ濃ニシテ味厚美
ナルニシカス
家蜜ノ房内處々ニ滴リタマリタルヲ採用ユル者最上品也然レドモ
是物多ク得難シ故ニ房を三分一残シテ蜂ノ粮トシ三分二ヲ採リ布袋
或ハ大ナル竹籮 ニ盛リ其下ニ磁器ヲウケ置キ暖所ニ安シテ太陽ニ晒ス
時ハ自ヲ蜜溶化シ滴下スル者ヲ取ル垂レ蜜ト名ケテ最上トス是生蜜
ナリ此品冬春ヲ経テ色白ク凍リ凝結シテ砂ノ如シ所謂白蜜或は白
砂蜜是ナリ又蜜アル巣ヲ大釜ニ入煎テ熱ニ乗シテ絞リ採リタルヲシボ
リ蜜ト云是ニハ蜂子も雑リ色赤ク濁ル故ニ次品トス所謂塾蜜
ナリ熊野蜜ハ此二品にスギズ
凡ソ蜂ノ蜜ヲ醸ス事百花ノ清潔ナル清粋ナル津液を用テ作リ出セルナリ
其醸スニ不潔ノモノヲ用ユル古説アレ共甚虚誕ノ説ナリト貝原翁コレカ為
ニ冤ヲ訴ル説アリ見ルベシ
凡ソ蜜蜂春ノ末分レ飛テ一處ニ簇リ鞠ノ如クニナリテ人家ノ簷或ハ木枝
ニ下垂セル事アリコレ親蜂ニ付テ子蜂ノ分ルゝナリ大概八十八夜ヨリ四五日ノ際
夏至ノ頃マテニ分ルハ性ヨシ秋分ル事アリ性宜シカラズ堂へ入養フト虽トモ
居ツカズシテ逃走ル事アルモノナリ夏ノ土用過テ分ルモ時節ハヅレユヘ益ナシ
ト云況ンヤ秋月分ル共ノヲヤ
蜂ヲ養フニ木ニテ造ル匣ヲ作ル是ヲ堂ト云高サ一尺一寸横一尺二寸深
サ一尺四寸ト云コレ定法ナリ開キ蓋ニス小孔ヲ下ニ穿ツ下ノ方ニ五ツ並へ
テ開クベシ下ニ一ツ開ク又横ニ細長ク五処ホドアカリトリノ孔ヲ開クヲヨシ
トス其孔黄大豆 の大サニシテヨシ蜂出入自由ナルホドニシテ宜シ穴大ナレバ熊
蜂入テ蜜蜂ヲ喰殺シ蜜ヲ吸取ル如是ノ事アレバ聚レル衆蜂舊巣ヲ捨去ル事マゝアル事ナリ
蜂ノ分ル時簇リ聚リタルヲ養ントスルニ箱或ハ酒樽ノ内ニ蜜をヌリ蜂
ヲ箒ニテ掃ヒ落シ入置ハ一夜ニシテ隅ノ処ニ巣ヲ結 ルモノナリ前ニ図ス
ル処ノモノハ桶ナリ寒冷ニナレバ菰 ニテ外ヲ包ミ南ヲウケテ暖処ニ置
ベキナリ箱或ハ桶ノ内ヘ新ニ分ル処ノ蜂ヲ入畢ラハ内へ皿ニ蜜ヲ入箱
中ニ入置キ小孔マデモ残リナク杉葉ヲ外ヨリサシテ塞クベシ両三日
モ居ナジミタルヲ伺テ杉葉ヲ取去ベシ筑前ニテハ稲草 ニテ編笠
ノ如キ形ノモノヲ作リ内ノ上ノ処ニ酒ヲ塗リ蜂ノ多ク簇居タル
蘂も深山ノモノト異ナル故ニヤ其蜜薄ク山蜜ノ濃ニシテ味厚美
ナルニシカス
家蜜ノ房内處々ニ滴リタマリタルヲ採用ユル者最上品也然レドモ
是物多ク得難シ故ニ房を三分一残シテ蜂ノ粮トシ三分二ヲ採リ布袋
或ハ大ナル
時ハ自ヲ蜜溶化シ滴下スル者ヲ取ル垂レ蜜ト名ケテ最上トス是生蜜
ナリ此品冬春ヲ経テ色白ク凍リ凝結シテ砂ノ如シ所謂白蜜或は白
砂蜜是ナリ又蜜アル巣ヲ大釜ニ入煎テ熱ニ乗シテ絞リ採リタルヲシボ
リ蜜ト云是ニハ蜂子も雑リ色赤ク濁ル故ニ次品トス所謂塾蜜
ナリ熊野蜜ハ此二品にスギズ
凡ソ蜂ノ蜜ヲ醸ス事百花ノ清潔ナル清粋ナル津液を用テ作リ出セルナリ
其醸スニ不潔ノモノヲ用ユル古説アレ共甚虚誕ノ説ナリト貝原翁コレカ為
ニ冤ヲ訴ル説アリ見ルベシ
凡ソ蜜蜂春ノ末分レ飛テ一處ニ簇リ鞠ノ如クニナリテ人家ノ簷或ハ木枝
ニ下垂セル事アリコレ親蜂ニ付テ子蜂ノ分ルゝナリ大概八十八夜ヨリ四五日ノ際
夏至ノ頃マテニ分ルハ性ヨシ秋分ル事アリ性宜シカラズ堂へ入養フト虽トモ
居ツカズシテ逃走ル事アルモノナリ夏ノ土用過テ分ルモ時節ハヅレユヘ益ナシ
ト云況ンヤ秋月分ル共ノヲヤ
蜂ヲ養フニ木ニテ造ル匣ヲ作ル是ヲ堂ト云高サ一尺一寸横一尺二寸
サ一尺四寸ト云コレ定法ナリ開キ蓋ニス小孔ヲ下ニ穿ツ下ノ方ニ五ツ並へ
テ開クベシ下ニ一ツ開ク又横ニ細長ク五処ホドアカリトリノ孔ヲ開クヲヨシ
トス其孔
蜂入テ蜜蜂ヲ喰殺シ蜜ヲ吸取ル如是ノ事アレバ聚レル衆蜂舊巣ヲ捨去ル事マゝアル事ナリ
蜂ノ分ル時簇リ聚リタルヲ養ントスルニ箱或ハ酒樽ノ内ニ蜜をヌリ蜂
ヲ箒ニテ掃ヒ落シ入置ハ一夜ニシテ隅ノ処ニ巣ヲ
ル処ノモノハ桶ナリ寒冷ニナレバ
ベキナリ箱或ハ桶ノ内ヘ新ニ分ル処ノ蜂ヲ入畢ラハ内へ皿ニ蜜ヲ入箱
中ニ入置キ小孔マデモ残リナク杉葉ヲ外ヨリサシテ塞クベシ両三日
モ居ナジミタルヲ伺テ杉葉ヲ取去ベシ筑前ニテハ
ノ如キ形ノモノヲ作リ内ノ上ノ処ニ酒ヲ塗リ蜂ノ多ク簇居タル
かもす事は、山蜜と違う所はない。だけれども、家蜜は毎年採り、花の
種類も深山のものと異なるからだろうか、その蜜は薄くて山蜜の濃くて味が濃厚でおいしい
事にかなわない。
家蜜の房内に所々滴ってたまたったのを集めて使うのは最上級品である。けれども
これはたくさんはとれない。だから、房を三分の一残して蜂の食料とし、三分の二をとり袋布
または大きなザルにもり、その下に磁器を置いてうけて、暖かい所に置いて、太陽に晒す。
すると、蜜は自然とやわらかく溶けて下に滴となって落ちる。これを垂れ蜜と名付けて最上とする。これが
生蜜である。この蜜が春冬を経て色が白く固まり、砂のようになったのを、白蜜または
白砂蜜である。また、蜜の入った巣を大きな釜に入れて熱し、絞り取たものをシボリ
蜜という。これには、蜂の子もまざり、色が赤く、濁るので二級品とする。いわゆる熟蜜
である。熊野蜜はこのような二級品にすぎない。
だいたい蜂が蜜を醸すには百花の清潔で純粋なる津液*1を用いて作りだした物である。
醸すのに、不潔の物を用いるという古説あるけれども、ひどいでたらめの説であると貝原翁*2が
ぬれぎぬを訴える説があるので見るべきである。
だいたい蜜蜂は春の末分かれて飛んで一箇所にむらがって、玉のようになって人家の軒や木枝
にぶら下がっている事がある。これは親蜂について子蜂が分かれる所である。大概八十八夜*3から四五日際
夏至の頃までに分かれるものは、性質がいい。
秋に分かれる事もあるが、あまり性質はよくない。堂へ入れて飼っても
居つかないで、逃げてしまう事がある。夏の土用過ぎて分かれるものも時期はずれで益が無いというから、
まして、秋月分かれるものにおいては当然いうまでもない。
蜂を養うのに木で作った箱を堂 という。高さ一尺一寸横一尺二寸深さ
一尺四寸という。*4これが定番である。開き蓋には小さな穴を開ける。下の方に五つ並べ
てあけるべきである。下に一つ開きまた横に細長く五か所ほど、あかりとりの穴を開くといい。
その穴はミツマメくらいが、蜂の出入りが自由になってでちょうどいい。穴が大きすぎると
熊蜂*5が入って蜜蜂を食い殺し、蜜を吸い取る。これがあると、集まった蜂は古巣を
捨て去る事がよくある。
蜂が分かれて群がって集まっているのを飼おうとするなら、箱または酒樽の内に蜜を塗り蜂を
ほうきで払いおとし入れて置けば、一夜で隅の所に巣を作る。前に図に
描いたのは桶である。寒くなったら菰 で外を包み、南を受けて暖かい所に置くのがよい。
箱や桶の内に分かれた蜂を入れ終えたら、内にさらに蜜をいれ
箱の中におき、小穴までも残りなく杉の葉を外からさして塞ぐ。二、三日
も居てなじんだのを様子をみて杉の葉を取り去る。筑前*6では藁で編笠
のような物を作り内の上の所に酒を塗り蜂の多く群がっている所を
種類も深山のものと異なるからだろうか、その蜜は薄くて山蜜の濃くて味が濃厚でおいしい
事にかなわない。
家蜜の房内に所々滴ってたまたったのを集めて使うのは最上級品である。けれども
これはたくさんはとれない。だから、房を三分の一残して蜂の食料とし、三分の二をとり袋布
または大きなザルにもり、その下に磁器を置いてうけて、暖かい所に置いて、太陽に晒す。
すると、蜜は自然とやわらかく溶けて下に滴となって落ちる。これを垂れ蜜と名付けて最上とする。これが
生蜜である。この蜜が春冬を経て色が白く固まり、砂のようになったのを、白蜜または
白砂蜜である。また、蜜の入った巣を大きな釜に入れて熱し、絞り取たものをシボリ
蜜という。これには、蜂の子もまざり、色が赤く、濁るので二級品とする。いわゆる熟蜜
である。熊野蜜はこのような二級品にすぎない。
だいたい蜂が蜜を醸すには百花の清潔で純粋なる津液*1を用いて作りだした物である。
醸すのに、不潔の物を用いるという古説あるけれども、ひどいでたらめの説であると貝原翁*2が
ぬれぎぬを訴える説があるので見るべきである。
だいたい蜜蜂は春の末分かれて飛んで一箇所にむらがって、玉のようになって人家の軒や木枝
にぶら下がっている事がある。これは親蜂について子蜂が分かれる所である。大概八十八夜*3から四五日際
夏至の頃までに分かれるものは、性質がいい。
秋に分かれる事もあるが、あまり性質はよくない。堂へ入れて飼っても
居つかないで、逃げてしまう事がある。夏の土用過ぎて分かれるものも時期はずれで益が無いというから、
まして、秋月分かれるものにおいては当然いうまでもない。
蜂を養うのに木で作った箱を
一尺四寸という。*4これが定番である。開き蓋には小さな穴を開ける。下の方に五つ並べ
てあけるべきである。下に一つ開きまた横に細長く五か所ほど、あかりとりの穴を開くといい。
その穴はミツマメくらいが、蜂の出入りが自由になってでちょうどいい。穴が大きすぎると
熊蜂*5が入って蜜蜂を食い殺し、蜜を吸い取る。これがあると、集まった蜂は古巣を
捨て去る事がよくある。
蜂が分かれて群がって集まっているのを飼おうとするなら、箱または酒樽の内に蜜を塗り蜂を
ほうきで払いおとし入れて置けば、一夜で隅の所に巣を作る。前に図に
描いたのは桶である。寒くなったら
箱や桶の内に分かれた蜂を入れ終えたら、内にさらに蜜をいれ
箱の中におき、小穴までも残りなく杉の葉を外からさして塞ぐ。二、三日
も居てなじんだのを様子をみて杉の葉を取り去る。筑前*6では藁で編笠
のような物を作り内の上の所に酒を塗り蜂の多く群がっている所を
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