栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい



原本B

生物情報

翻刻

(右頁上段)
絡新婦 ジヤログモ 毒グモ 豫州ニテ ハタオリグモ
甲州ニテエツサグモトモ云物ニテ触レハユサヽと巣網ヲ
ユスル故ニ名ク大ナルモノアリ此尾黒キ処紺青色ヲ
ナス上下四方ヘ二脚ツヽ
サス
江戸
ニテ
ベツ
カツ
コウ
ト云
小児
ノ戯
ニ四指
ヲ開テ
目口入
テ嚇ス状ヲ
ナス因テ此名アリ
此モノ糸ヲ以テ疣目ヲ紮ル切レ去ル其毒アルニ因テナリ

(右頁下段)
六方クモ
前手二本各一処ニ並ヒ一本
ノ如シ
六方ヘサス
好テ木葉ノウラニ
ツキテ
不動
触レハ
走ル
事ハ
ヤシ

(左頁上段)
壁銭 ヒラグモ

(左頁下段)
四方クモ
享和元年九月廿九日朴氏ヨリ来リ
写ス全体土黄色ニシテ飛イロヲ帯

フ背ニ黒両條アリ走ル事速ニシテ
尾ヨリ糸ヲ出ス四足四方ヲサ
ス因テ此名ヲ得タリ

書き下し

現代語訳

(右頁上段)
絡新婦 ジヤログモ 毒グモ 豫州*1では ハタオリグモ
甲州ではエツサグモとも言う物である。触れば、ゆさゆさと巣網ヲ
ユスル為に名づけられた。大きいものがあり、尾が黒い所は紺青色をする。
二脚ずつ上下四方ヘ指す。江戸ではベツカツコウという。
子供が遊びで、四本の指を目と口をに入れて驚かす様にちなんで
この名がある。
この糸で疣目をしばると切れてとれるのは、その毒がある為である。

(右頁下段)
六方クモ
前の手二本が一本のように一箇所に並んで、
六方を指す
好んで木葉の裏について、動かない。
触れば、すばやく走る。

(左頁上段)
壁銭 ヒラグモ

(左頁下段)
四方クモ
享和元年*2九月二十九日朴氏*3から来て
写す。全体土黄色で、鳶色をおびる。
背に黒い
フ背ニ黒二本の線があり、走るのが速く
尾から、糸を出す。四足が四方向刺す為、
この名がついた。

備考

思うに、ここで挙げられているジョロウグモは、
現在でいう所のコガネグモに見える。(ジョロウグモはもっと腹が細く、
脇に赤い紋が入るのが特徴)
また、ジョロウグモは比較的臆病で、触れるとすぐに巣の端へ逃げる。
巣を大きく揺らすのはコガネグモの特徴である。

なお、クモの糸は強靭でしられており、糸として使う事も出来るが、
疣を結ぶととれるというのは、単にイボが壊死したか、糸でねじ切られたかの
どちらかである。クモの糸自体に毒性はない。

ヒラグモは、よく図を拡大してみると、白く丸い巣を作っているようにも、見えるが、
卵塊を守っているようにも見える。後に出るヒラタグモの特徴をそなえていないので、
ヒラタグモと断定するのは間違いかもしれない。

クモは基本、鋏角を除き、四対八脚の脚を持つ
四方クモに至っては、ジョロウグモの図のように、
二対ずつ足をならべているわけでもないので
、何らかの事情で二対の足がもげるなどして
失われてしまったものであるとかんがえられる。

あとのクモについては専門家の意見を待ちたい。

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