栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい



生物情報

翻刻

(右頁上段)
水蠆 ミガラ ヤガラムシノ一種也
   ユリノハナスイ
池塘水中ニ生テ魚子ヲ食フ
夏日天晴ノ時石上ニ翅ヲ曝シテ
眸凜紅侫忙螢譽鷲水中ニ飛入
ル吻上ノ両手蟷螂ノ如シ其身
扁薄ニシテ肉ナシ故ニ
身殻空ミガラト云

(右頁下段)
ミガラ 太鼓打トモ云
丙子年四月廿日写

頭ノ形

遍身ヒラタク
黒シ歩ム事至テ遅鈍ナリ
終ニ水上ノ草ニハイ
上リ緊抱キ背
破レテ化シテ蜻
蜒トナルモノナリ

(左頁右上)
松藻虫 俗ニホンボウ秋月セヽナギ
汚流水ニウキ仰ニ流ニ逆テ游行ス
水枯共羽飛スマツモ虫共云 松藻
ノ中ニ生シ行潦水ニモタマ々
ミアタル事アリ

(左頁下段)
鼓虫 ミヅスマシ江戸
   マイ〃虫京
サラトメ土佐
スメ〃
ミコ津軽
水グルマ 上総
コキアライ 水戸
ミコマイ 備山岡山
コキマワシ 上野
ヱカキムシ佐州
ノヽシムシ
事物紺珠ニ写字虫ノ名ア
リ池澤塘溝水ノヨトミノ
処ニ生ス状黒豆ノ如ク光アリ
背上ニ甲アリ常ニ水底ニ伏シ時々
水面ニ浮ビ回旋スル事速ナリ如
是スル事数遍ニシテ又水底入ル
暫クシテ復浮テ回旋スル事始
ノ如シ其状草書ヲ写ス勢ニ
似タリ故ニ写字虫ノ名アリ本邦加賀ニテ状カキ虫ノ名ア
リ和漢符合セリ又国字ノのノ字ヲ書ニ似タリ因テノヽ
ジ虫ノ名モアリコレヲ廣キ水盤中ニ貯ヘ養フ一夜ニシテ尽飛去

書き下し

現代語訳

(右頁上段)
水蠆 ミガラ ヤガラムシの一種である
   ユリノハナスイ
池塘*1水中にいて、魚の子を食べる。
夏日の晴天の時、石の上に羽をさらして、
發飛ぶ。夜になれば、また水中に飛んで入る 
吻の上の両手はカマキリのようで、その体は
薄平たく、肉がない。その為、
身殻空ミガラという。

(右頁下段)
ミガラ 太鼓打ともいう
丙子年四月二十日に写す

頭ノ形

全身平たく
黒い。歩くのが大変遅い。
長い時間をかけ、水上の草にはい
のぼって、きつく葉を抱き、背中が
われて羽化してトンボ
となるものである。

(左頁右上)
松藻虫 俗にホンボウ秋月セセナギ
汚い流水に浮きあおむけに流れに逆らって泳ぐ。 
水が枯れても羽で飛ぶ。マツモ虫ともいいう。松藻
の中で生じて、水たまりにも時々
見られる事がある。

(左頁下段)
鼓虫 ミヅスマシ江戸
   マイマイ虫京
サラトメ土佐
スメスメ
ミコ津軽
水グルマ 上総
コキアライ 水戸
ミコマイ 備山岡山
コキマワシ 上野
ヱカキムシ佐州
ノノジムシ
事物紺珠*2に写字虫の名がある。
池沢、つつみのみぞの水のよどみの
処にいる。姿は黒豆のようにツヤがある。
背の上に甲があり、常に水底に伏して時々
水面に浮かびすばやく旋回する。
このような事を数回すると、また水底に入る。
しばらくして、また浮いて始めのように旋回する。
その様子が草書を写す勢いに
にているので、写字虫の名がある。日本の加賀でも、状カキ虫の名があり
日本と中国で符合する。また国字の「の」の字を書くのに似ているので、ノノジムシ
の名もある。これを広い水盤に貯めて飼ったら、一晩にして、ことごとく飛び去ってしまった。

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