栗本丹洲著「千虫譜」のデータベース的なものを作りたい



原本B

生物情報

ハナオコゼ

翻刻

右二図スル所ノモノ阨入多エジツタ謁辣葛エラカ河水中ノ産ナリ其
国南天竺ノ西ニアリ常ニ雲気ナク雨フルコト稀ナル熱国ナリ
其国中ニ一大河アリ謁辣葛エラカト云一名ハ泥緑ヱイロノ河ト云是即チ
弗里加フリカ中ノ大河ニシテ末ニ至レハ七十余沠ニ分レ流下スト云其水源
ヲ極ルモノナシ川幅モ幾里ナル事ヲ不知ト云伝フ此国民此河水
ヲ汲取テ生活ス毎歳五月ニ洪水出ル事アリ土人其水漲ル事ノ
多寡ヲ見テ歳ノ豊歉ヲ知ルト云此河水中ニ此物多シ土人捕食
フ大ニ人ヲ補益スト云宝暦中蛮舶将来スルモノ璚浦譚官名
村三太夫ナル者藍水田邸氏ニ贈ル遍身細鱗兒好飯キスゴニ似タリ
但短キ四脚アルヲ異トスルノミ其鱗極テ緻密ニシテ光澤アリ
手ニテ撫レバ甚滑ニシテトラヘガタシ其體体円ニシテ腰腰ノ所微扁ナリ
頭尖リ眼小ナリ熟按ルニ水蜥蜴ノ異品ナルベシ

蟾蜍水中ニ入テ魚ト化スルモノ俗ニ蛙変魚ト云稀ニアリ隅々
漁人是ヲ得テ養フモノアリ小魚
泥鰍蚯蚓等ヲ飼フ事数月ニテ
生活スト云
肥前唐津ノ産名ヲ
知ル者ナシ此魚水
中ニ在ルニ水多時
ハ四ノ鰭ヲ開テ浮キ
游キ又水少キ處ニ至レ
ハ四足トナアシテ行ク事蝦蟆ノ如
シ飼置ニ常ニ小魚ヲ食フ

書き下し

現代語訳

右二描いた絵は、エジプトのエラカ河*1水中から産出したものである。その
国は南インドの西に有る。いつも雲がなく、雨が降る事は稀な暑い国である。
その国の中に一つの大河がある。エラカという。別名ヱイロの河という。ア
フリカの中の大河で、末ニ至と七十余の小さな川に分れ流れ下るという。その水源
を見極めた者はない。川幅も、何里*2あるかわからないといい伝わる。この国の住人はこの河の水
を汲み取って生活する。毎年五月に洪水が出る。現地人はその水の量の
多い少ないを見て、その年の豊作か凶作かを知るという。この河川の中にこの生物が多くいる。原住民はとらえて、食
べるので、たいへん助けになるという。宝暦中*3外国船が持ってきた物を璚浦譚官*4
村三太夫と言う人が、藍水田邸氏*5に贈る。全身細かい鱗におおわれ、キスに似ている。
ただし、短い四つの脚があるのが異なるだけである。その鱗は大変緻密で、光沢がある。
手ニテ撫レバ甚滑ニシテトラヘガタシ其體体円ニシテ腰腰ノ所微扁ナリ
頭は尖り、目は小さい。よく考えるに、水蜥蜴*6の異品であろう。

ヒキガエルが水中に入って、魚になるもの。俗に蛙変魚というのが稀にいる。たまたま
漁師に、これを得て飼う人がいた。小魚
ドジョウ、ミミズ等をやって飼うと、数月ぐらい
生きていたという。
肥前*7唐津でとれたが、名を
知る人はいなかった。この魚、水
中で水が多い時
は、四つのヒレを開いて浮き、
泳ぎ、又水が少ない所にくれ
ば、ヒレを四足となして行く事
ヒキガエルの様に
飼っておくといつも小魚を食べる。

備考

エジプト、アフリカの大河、洪水などの特徴から謁辣葛エラカ泥緑エイロ
ナイル川の事であると考えられる。

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