最終更新: karasu_miyako 2020年10月18日(日) 14:39:24履歴
海老洞穴ハ毛利矦領分長州清末 海中所産ニ〆其地方
言ナリ蝲蛄 ノ異品ニシテ雌雄一所ニ居テ巣ヲ造ル其
中ニ棲ム巣ノ上下ニ竅アリテ出入ス故ニ此称アリ此
巣の質ハ海綿ノ如シ蛮名スポンギウスト云モノニ似タリ芋麻糸
ニテ織成スモノヽ如し軟ニシテ 俗云メリヤスノ如シコヽニ
図スル細カキ圏点ノ処ハ蓋ク小円ノ竅ナリ上端に絮アリ
細毛絨銀色ヲナス試ニ火中ニ投入スルニ焼焦スル
事ナシ質火浣布ニ似タリ是又人識サルモノナリ
一体形糸瓜絮ノ如シ故ニ海ヘチマト呼フ
此海ヘチマハ薬品會ニ出ル事アリテ偶見ルモノナ
レ共蝲蛄ノ造レル巣ナル事ヲ知ラズ今茲ニ親
シク目撃シテ始テコヽニ一識ヲ博フス此モノ文政壬午秋参欧堀田 ヲモテ
矦恵贈セラルヽモノナリ
栗丹州誌 ウラ
海ヘチマ
海中産サリカニノ造成スル所ノ
巣ナリ或云海中ニ此物生〆後ニ
エビ雌雄来テ寄居〆我室トス
此エビヲ寄生蝦 ト云空殻ノ螺中ニ
宿ヲ假借スル寄居虫ト其意
同シト云ヘリ此巣ハ此雌雄ノカニ
ノ作レルモノト云へ共顧フニ此小蠏
ノ巧ニアラサルヘシ友人芝陽ニ見
セ許スル蝲蛄 異品ト云ヘリ
言ナリ
中ニ棲ム巣ノ上下ニ竅アリテ出入ス故ニ此称アリ此
巣の質ハ海綿ノ如シ蛮名スポンギウスト云モノニ似タリ芋麻糸
ニテ織成スモノヽ如し
図スル細カキ圏点ノ処ハ蓋ク小円ノ竅ナリ上端に絮アリ
細毛絨銀色ヲナス試ニ火中ニ投入スルニ焼焦スル
事ナシ質火浣布ニ似タリ是又人識サルモノナリ
一体形糸瓜絮ノ如シ故ニ海ヘチマト呼フ
此海ヘチマハ薬品會ニ出ル事アリテ偶見ルモノナ
レ共蝲蛄ノ造レル巣ナル事ヲ知ラズ今茲ニ親
シク目撃シテ始テコヽニ一識ヲ博フス此モノ文政壬午秋参欧堀田 ヲモテ
矦恵贈セラルヽモノナリ
栗丹州誌 ウラ
海ヘチマ
海中産サリカニノ造成スル所ノ
巣ナリ或云海中ニ此物生〆後ニ
エビ雌雄来テ寄居〆我室トス
此エビヲ
宿ヲ假借スル寄居虫ト其意
同シト云ヘリ此巣ハ此雌雄ノカニ
ノ作レルモノト云へ共顧フニ此小蠏
ノ巧ニアラサルヘシ友人芝陽ニ見
セ許スル
海老洞穴は毛利家領土の、長州*1清末 海中に産して、その地の方
言である蝲蛄 の異品で、雌雄が一所に居て巣を造り、その
中に住む。巣の上下に穴があって、出入りするので、この名がある。この
巣の質は海綿のようで外国語でスポンギウスというものに似ている。芋麻糸*2
で織った物のようだ。手触りは柔かく、俗にいうメリヤスのようだ。軟ニシテ ここに
図した細かい、丸の所は、多分、小さい円の穴である。上端に長い糸があり、
細毛糸が銀色をなしている。ためしに、火中ニに投入じると、焼け焦げる
事はない。その性質は火浣布*3に似ている。これは、又、人が知らないものである。
一体の形はヘチマに切れ目がないようである。ゆえに、海ヘチマと呼ぶ
この海ヘチマは薬品會*4に出る事があって、偶々見た物
だけれども蝲蛄の造る巣である事を知らない。今ここによく
見てはじめて、ここに一識ヲ博フス*5此モノ文政壬午*6秋参欧堀田*7 ヲモテ
矦が贈られた物である。
栗丹州誌 ウラ
海ヘチマ
海中産ザリガニのつくりあげる
巣である。或いは、海中にこの物生じてその後に
エビの雌雄来て寄居して、我室とする。
このエビヲ寄生蝦 という。殻の巻貝の中に
宿を借りるヤドカリとその意味は
同じといえる。この巣は雌雄のカニが
作ったものというが、かんがえるに、小エビの
つくったものではないだろう。友人芝陽*8に見
せつまびらかにする。蝲蛄 異品ト云えるだろう。
言である
中に住む。巣の上下に穴があって、出入りするので、この名がある。この
巣の質は海綿のようで外国語でスポンギウスというものに似ている。芋麻糸*2
で織った物のようだ。手触りは柔かく、俗にいうメリヤスのようだ。
図した細かい、丸の所は、多分、小さい円の穴である。上端に長い糸があり、
細毛糸が銀色をなしている。ためしに、火中ニに投入じると、焼け焦げる
事はない。その性質は火浣布*3に似ている。これは、又、人が知らないものである。
一体の形はヘチマに切れ目がないようである。ゆえに、海ヘチマと呼ぶ
この海ヘチマは薬品會*4に出る事があって、偶々見た物
だけれども蝲蛄の造る巣である事を知らない。今ここによく
見てはじめて、ここに一識ヲ博フス*5此モノ文政壬午*6秋参欧堀田*7 ヲモテ
矦が贈られた物である。
栗丹州誌 ウラ
海ヘチマ
海中産ザリガニのつくりあげる
巣である。或いは、海中にこの物生じてその後に
エビの雌雄来て寄居して、我室とする。
このエビヲ
宿を借りるヤドカリとその意味は
同じといえる。この巣は雌雄のカニが
作ったものというが、かんがえるに、小エビの
つくったものではないだろう。友人芝陽*8に見
せつまびらかにする。
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